史上最も偉大な日本映画は? 海外の名作に影響を与えた邦画5選。世界の映画作家にインスピレーションを与えた作品をセレクト
text by 小室新一
日本映画から大きな影響を受けたハリウッド映画は少なくない。今回は、海外の作品に多大なインスピレーションを与えた邦画を5本セレクト。ホラー、特撮、アニメーションなど、ジャンルを超えて、世界のクリエイターたちに響いた名作を紹介する。(文・小室新一)
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“減速=爆発”という斬新な設定
『新幹線大爆破』(1975)
監督:佐藤純弥
キャスト:高倉健、千葉真一、宇津井健
【作品内容】
ある朝、国鉄の本社に一本の電話がかかってくる。「東京発博多行きの新幹線・ひかり109号に爆弾を仕掛けた。列車の速度が時速80キロ以下になると、爆発する。」という脅迫だった。
【注目ポイント】
本作の主演を務めるのは、『八甲田山』(1977)や『幸福の黄色いハンカチ』(1977)などで知られる名優・高倉健。さらに宇津井健、千葉真一といった実力派俳優たちが脇を固め、作品全体に重厚感を与えている。
物語の舞台となるのは、高度経済成長の象徴ともいえる新幹線。そんな日本の希望を象徴する存在に爆弾を仕掛けるという犯人たちの行動は、成長の影に取り残された人々の怒りや孤独を反映しており、国家への警鐘とも受け取れる構図となっている。
さらに、国鉄職員や警察など、捜査・対応に奔走する人々の姿も丁寧に描写されており、サスペンス性とともに群像劇としての完成度も高い。
特筆すべきは、「時速80km以下に減速すると爆発する」というスリリングな設定だ。これは当時としては極めて斬新なアイデアであり、その後のエンタメ作品に大きな影響を与えた。キアヌ・リーブス主演のハリウッド映画『スピード』(1994)や、アニメ映画『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』(1997)などにも本作のエッセンスが色濃く反映されているとされている。
2025年にはNetflixで『新幹線大爆破』がリメイクされ、日本国内のみならず世界中で話題に。グローバルランキング2位を記録するなど、その影響でオリジナル作品も再評価され、改めてその先見性と完成度の高さに注目が集まっている。