日本映画史上最も“スカッとする”結末は? 最高のラスト5選。胸のつかえが吹き飛ぶ爽快なエンディングをセレクト
裏切り、挫折、不条理――そんな現実に打ちのめされる日々の中で、爽快な逆転劇や、努力が実を結ぶ瞬間を描いた映画を観ると、不思議と心が軽くなる。今回は、そんな爽快なラストを迎える、スカッとする日本映画を5本セレクト。笑って泣いて、最後には胸のつかえが吹き飛ぶような快感をくれる傑作を紹介する。※映画のクライマックスについて言及があります。未見の方はご留意ください。(文・阿部早苗)
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誰も悪人にしない、優しくも大胆などんでん返し
『鍵泥棒のメソッド』(2012)
監督:内田けんじ
キャスト:堺雅人、香川照之、広末涼子
【作品内容】
35歳の売れない役者・桜井(堺雅人)は、銭湯で転倒して記憶を失った男・山崎(香川照之)になりすます。しかし山崎の正体は、なんと腕利きの殺し屋だった。一方、記憶を失った山崎は自分を“桜井”だと信じ込み、役者としての新たな人生を歩み始める。まったく異なる世界に足を踏み入れた二人の運命が交錯し、やがて予想を裏切るクライマックスへと突き進んでいく。
【注目ポイント】
2012年に公開された映画『鍵泥棒のメソッド』は、人生の“中身”をすり替えてしまうという大胆な発想を軸にした、痛快なコメディドラマ。監督・脚本を手がけたのは、デビュー作『運命じゃない人』で注目を浴びた内田けんじ。主演の堺雅人と香川照之、そして広末涼子といった実力派俳優たちが、ユーモアとヒューマニズムを絶妙なバランスで演じきっている。
本作の脚本は高い完成度を誇り、第36回日本アカデミー賞では最優秀脚本賞を受賞。丁寧に配置された伏線と、それが後半に向けて一気に回収されていく快感は、まさに“構成の妙”といえる。
堺演じる冴えない三流役者・桜井が、偶然から人生を入れ替えてしまうことで手にしたのは、スリルと責任と、そして自分自身の在り方への気づき。一方のコンドウは、記憶を失ってなお真面目に生きようとする姿勢から、新たな自分を築き上げていく。二人の人生が交錯する中で浮かび上がるのは、“人は何者にでもなれる”という前向きなメッセージだ。
そして特筆すべきは、終盤に訪れる爽快などんでん返し。すべてが明らかになったとき、観客は心地よいカタルシスとともに、登場人物たちの選択を讃えたくなるだろう。
笑いあり、スリルあり、ほろりとする感動あり。『鍵泥棒のメソッド』は、ただのコメディでは終わらない。「人生をやり直すことはできる」という希望の物語が、観る者すべての背中をそっと押してくれる。