朝ドラ史上最も衝撃的だった「死」は? ロスを生んだ俳優5選。国民が泣いた…ドラマ史に刻まれた名シーンをプレイバック

text by 苫とり子

NHK連続テレビ小説(通称・朝ドラ)といえば、必ずと言っていいほど途中退場するキャストがいる。愛するキャラクターの退場に、身を切られる思いの視聴者は“ロス”に陥り、SNSではその名がトレンド入りする現象がもはや恒例となっている。今回は、最も視聴者に最も衝撃を与えた途中退場キャストを5名紹介する。(文・苫とり子)

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素直になれない父親の精一杯の愛情が伝わる最期

北村一輝(川原常治)『スカーレット』(2019)

北村一輝
北村一輝【Getty Images】

脚本:水橋文美江、三谷昌登
演出;中島由貴、佐藤譲、鈴木航、小谷高義、泉並敬眞、野田雄介
出演:戸田恵梨香、富田靖子、松下洸平、伊藤健太郎、大島優子、林遣都、桜庭ななみ、福田麻由子、黒島結菜、溝端淳平、羽野晶紀、三林京子、マギー、西川貴教、佐藤隆太、烏丸せつこ、財前直見、水野美紀、イッセー尾形、稲垣吾郎、北村一輝

【注目ポイント】

 近年、朝ドラで描かれるヒロインの父親は模範的な人物が多いが、かつてはダメ親父が定番だった。第101作『スカーレット』のヒロイン・喜美子(戸田恵梨香)の父である常治(北村一輝)もその一人だ。

 貧乏でお金がないのに、酒を飲むと気が大きくなって誰彼構わずごちそうしたり、見ず知らずの人間を自宅に住まわせたりと家族にとっては迷惑極まりない男。少しでも文句を言われようものなら烈火の如く怒り、ちゃぶ台をひっくり返すという典型的な昭和のダメ親父だった。

 なおかつ金銭面でいつまでも喜美子を頼りにし、その自由を奪った常治。表面的に見れば、“朝ドラ史上最悪の父親”と呼ばれた『おちょやん』のテルヲ(トータス松本)と並ぶレベルのダメさ加減だ。

 しかし、常治の場合はテルヲと違って働き者で、喜美子に対する愛情も確かに感じられた。喜美子と八郎(松下洸平)の結婚にも当初は反対しながらも、心では2人の幸せを願い、体を壊すほど働いて離れの家を建ててあげたこともある。

 だが、ついには長年の酒と無理が祟り、すい臓がんに。最後は喜美子たちが作ってくれた松茸ご飯を一口も手をつけられないほど弱り切っていたが、一発おならをかまして家族の心を和ませる。さらにはゴミを取るという名目で喜美子の頭を撫で、「ほな、またな」と優しい顔で告げ息を引き取った常治。

 素直になれない父親の精一杯の愛情が伝わってくる最期は間違いなく朝ドラ史に残る名シーンだ。

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