朝ドラ『あんぱん』劇中で死亡して“ロス現象”を生んだ俳優(4)ピンボケでも泣ける…巧みな演技で大ブレイク
2025年3月31日より放送開始したNHK朝ドラ『あんぱん』。じわじわと話題を集める本作だが、これまで多くの魅力的なキャラクターが登場しては消えていった。そこで今回は、退場が惜しまれたキャラクターを5人厳選して。“ロス”を嘆く視聴者の反応とともにご紹介する。第4回。(文・野原まりこ)
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写真一枚に込められた深い愛と別れ
中島歩(若松次郎)
のぶに思いを寄せながらも一歩を踏み出せずにいる嵩をよそに、颯爽と彼女の心を射止めた若松次郎。中島歩の柔らかな存在感と時代性をまとった佇まいは、物語に溶け込み、視聴者の支持を一気に集めた。途中からの登場でありながら、その演技力とキャラクターの誠実さによって、次郎は『あんぱん』の世界に不可欠な存在となっていった。
のぶが小学校の教員になって間もない頃、彼女にプロポーズをする次郎。初めは結婚を躊躇うのぶだったが、次郎は「待つよ」と静かに寄り添う。亡き結太郎が“導いた”とも言えるこの出会いは運命めいており、豪と蘭子に続く“推せるカップル”として多くのファンの心を掴んだ。
しかし、そんな次郎も戦争の爪痕に抗えず、6月24日(火)放送の第13週・第62話でついに退場のときを迎える。戦地から生還したものの、病を抱えていた彼は、十分な治療も受けられないまま病状が悪化。届いたのは、危篤を告げる電報だった。そしてそのまま、のぶのもとに戻ることなく旅立ってしまう。
残されたのは、次郎が趣味で撮り続けたフィルムの数々。そこに写されていたのは、ほとんどがのぶの笑顔だった。唯一、のぶが撮った次郎の写真はピンボケだったが、それでも彼の優しい表情がにじむように写っていた。
涙ながらにその写真を見つめるのぶの姿。そこには、言葉では表しきれない愛と喪失の深さが静かに宿っていた。
「次郎さん…」
「写真からのぶへの深い愛が伝わってくる」
「ピンボケでも残った一枚が胸に刺さる」
視聴者からは、次郎の最期に対する惜別の声が相次いだ。彼が遺した写真は、何よりも雄弁に、のぶへの愛を語っていた。まさに、静かで美しく、忘れがたい別れのシーンであった。
(文・野原まりこ)
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【了】