ラスト15分で全てがひっくり返る日本映画は? 衝撃の結末(1)真実はどこに…奇妙な隣人のまさかの正体は?

text by ニャンコ

映画の醍醐味は、予想外の展開が訪れるその瞬間にある。中でもラスト数分で物語が一変する作品は、観る者の思考を一気に逆回転させ、最初から再視聴したくなるような中毒性を持つ。今回は、ラスト15分で全てがひっくり返る日本映画を5本セレクト。予想外の結末に、感情が揺さぶられる極上の作品を紹介する。第1回。※映画のクライマックスについて言及があります。未見の方はご留意ください。(文・ニャンコ)

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奇妙な隣人のまさかの正体

『アヒルと鴨のコインロッカー』(2007)

濱田岳
濱田岳【Getty Images】

監督:中村義洋
キャスト:濱田岳、瑛太、関めぐみ

【注目ポイント】

 本作は、大学入学を機に仙台へ引っ越してきた気弱な青年・椎名(濱田岳)が、奇妙な隣人・河崎(瑛太)と出会い、彼の立てた「本屋で広辞苑を盗む」という突飛な計画に巻き込まれるところから幕を開ける。

 やがて椎名は、河崎の口から語られる過去に耳を傾けるようになる。そこには、かつての恋人・琴美(関めぐみ)や、彼女を取り巻くペットショップ店長・麗子(大塚寧々)といった人物たちが登場し、徐々にその背景が浮かび上がってくる。

 しかし物語が進むにつれ、椎名が信じていた“河崎”はすでにこの世を去っており、実は椎名の隣に住んでいたのは河崎の名を騙るブータン人留学生・ドルジだったという衝撃の真実が明らかになる。

 ドルジは、恋人の琴美をペット殺しの犯人グループに殺された過去を持ち、その復讐のために動いていたのだった。

 実際の河崎は、琴美の事件が発端となって命を落としており、ドルジは彼の死をきっかけに正体を隠して椎名に接近。そして、あの「本屋襲撃」も、亡き琴美のために仕組まれた復讐の一環だったのだ。

 “信じていた友人の正体がまったくの別人だった”というサスペンスフルな展開と、その裏にある「真実を隠しながらも正義を貫こうとする男の苦悩」は、観客に「本当の正しさとは何か」という深い問いを投げかけてくる。

 監督の中村義洋は、ミステリーと人間ドラマを絶妙に融合させ、仙台の街並みを背景にしながら、現実と虚構の境界がにじむ物語を丁寧に紡ぎ出している。

 中でも、濱田岳と瑛太という対照的な存在感を放つ俳優陣の演技は圧巻。2人の関係性が醸し出す緊張感や温度差は、単なるキャラクターの違いにとどまらず、「記憶と認識の曖昧さ」という本作の根幹テーマを観客に強烈に印象づける要因となっている。

(文・ニャンコ)

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【了】

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