『相棒』史上最高のトリックは? ファンが唸った神回5選。アイデアが天才すぎる…視聴者の度肝を抜いた究極の仕掛けとは?

text by Naoki

長年にわたって視聴者を魅了し続ける刑事ドラマ『相棒』では、実に多彩な犯人たちが登場する。中でも、視聴者の知的好奇心をかき立てるのが、緻密な計算のもと巧妙なトリックで犯行を遂げる「知能犯」の存在だ。現実的で思わず唸るようなものから、やや非現実的ながらも斬新な発想が光るものまで、そのトリックのバリエーションもまた『相棒』の大きな魅力のひとつである。今回は、特に印象深いトリックを用いた犯人たちを、厳選して5つ紹介しよう。(文・Naoki)

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初期だからこそ成立した、奇抜で鮮やかなトリック

「人間消失」(シーズン1 第9話)

山本未來
山本未來【Getty Images】

ゲスト俳優:山本未來

【注目ポイント】

『相棒』Season1のエピソード「人間消失」は、まだシリーズの方向性が固まっていなかった初期だからこそ可能だった大胆なトリックが光る一編だ。

 物語の鍵を握るのは、タツミ開発に恨みを持つ英会話講師・リサ(山本未來)。彼女はその職業を利用して社内に出入りし、なんと催眠術を使って社員たちを夢遊病者のように部屋の外へと誘導し、無人のオフィスで金庫破りを行うという超展開な犯罪を成し遂げる。

 社員たちが無表情のまま噴水を囲んで立ち尽くす場面は、現実離れした異様さと不気味な美しさが相まって、視聴者の目を奪う印象的なシーンとなっている。

 誰一人傷つけることなく巨額の金を奪うというその手口は、杉下右京に「もし私が警察官でなければ尊敬していたかもしれません」と言わしめるほど見事であり、犯罪でありながらも鮮やかさが際立つ。

 もちろん現実世界でこんな事件が起こることは考えにくいが、シリーズ化前夜の実験的な時期だったからこそ許された“大胆かつ大味”な構成が、本作に独特の魅力を与えている。

 さらに見逃せないのは、のちにシリーズを代表する人気キャラクターとなる伊丹刑事(川原和久)が、事件の被疑者であるリサに淡い好意を抱いているという描写だ。捜査一課で英語に最も堪能なのは三浦刑事だが、伊丹もところどころで英語を理解する場面があり、リサとの過去がちらつく。

 このように、「人間消失」はトリック、キャラクター、空気感のすべてにおいて、初期『相棒』ならではの自由な遊び心と挑戦が凝縮されたエピソードであり、シリーズの進化を振り返るうえでも興味深い一本だ。

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