FANTASTIC 6に夢中になる人が続出…『BACK TO THE MEMORIES PART5』神奈川公演レビュー
FANTASTICSのメンバーで構成されたFANTASTIC 6による公演『BACK TO THE MEMORIES PART5』。名曲カバーから芝居まで、多彩な演目が詰まった本公演は、メンバーの個性と、グループの絆が存分に発揮されたステージとなった。今回は、神奈川公演の模様を、愛を込めて振り返る。(文・加賀谷健)
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FANTASTICSの総合力を結集した一大エンターテイメント
2016年に結成され、1stシングル『OVER DRIVE』で2018年にデビューしたダンス&ボーカルグループ FANTASTICSは、ライブツアーや音楽番組出演などでの歌と踊りのパフォーマンスだけではなく、芝居まで主戦場とするマルチなグループ力を誇る。
あえて芝居だけに注目してみても、“ゆせそた”ことツインボーカルの八木勇征と中島颯太が2024年にそれぞれ出演した『婚活1000本ノック』(フジテレビ系)、『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(フジテレビ系)、さらにリーダー佐藤大樹が出演した2作『離婚しない男-サレ男と悪嫁の騙し愛-』(テレビ朝日系)と『瓜を破る〜一線を越えた、その先には』(TBS系)によって、2024年1月期クールに同じグループから3人のメンバーが4作品に出演するという、LDHアーティスト史上初の記録を打ち立てた。
LDHのネクストジェネレーションを牽引するJr.EXILE世代として歌と踊りと芝居までまとめあげる総合力が、グループ全体のずば抜けた機動力を裏打ちしている。
そればかりか、彼らには軽妙で多彩なバラエティ力まで備わっている。地上波初冠番組『FUN!FUN!FANTASTICS』(日本テレビ系)が2021年2月から現在までにSEASON5が放送されているが、喫茶店を舞台とするシチュエーションコメディでしなやかにスキルアップする真骨頂は、同番組と連動する舞台形式のライブステージ『BACK TO THE MEMORIES』へと拡張できること。
『BACK TO THE MEMORIES』は歌あり踊りあり芝居あり笑いあり……、というようにFANTASTICSの総合力を結集した一大エンターテイメントである。
初開催となった2021年4月公演では八木勇征を主演俳優として実に色っぽい芝居と底抜けに愉快な歌唱パートを随所に配置する構成あざやか。特に歌唱パートは待ってましたとばかり、往年の歌謡曲を綺羅星のようにはめ込み連打する。メンバーたちの芝居を生の舞台で観られるだけで満足なのに、誰もが知る国民的名曲の数々を惜しげもなくシームレスにカバーしてくれる贅沢がたまらない。
主演・木村慧人の第一声が、会場の心を掴む
『BACK TO THE MEMORIES』には例えば、「LOVEマシーン」から「LA・LA・LA LOVE SONG」、あるいは「WON’T BE LONG」からLDHアーティストとしてはEXILE以来となる正式カバーナンバー(2023年リリース)「Choo Choo TRAIN」など、日本のポップス史をEXILE魂で統合するような試みを感じた。
ぼくはこの公演を日本映画専門チャンネルで観たのだが、これはいつか絶対画面越しではなく実際の公演に足を運びたいと思っていたら、早くも5回目の開催となる本公演『BACK TO THE MEMORIES PART5』を観られるだなんて。あぁ、眼福、耳福(!)。さすがLDH。この夢(Dream)あふれ、幸せ(Happiness)極まる神奈川公演千秋楽(6月25日)について愛(Love)を込めてレポートしてみたい。
LDHアーティストが開催するアリーナやドームライブだと後輩グループが顔見せ興行的にオープニングアクトを担当するのだが、本公演で開演前の会場を温めるのは客席のファンたち。開演時間になると客席という客席から必須アイテムであるタンバリンで一斉に囃し立てる。
一階席中央あたりに座っていたぼくは、もうその囃し立てと賑やかな音の集合体を耳にしているだけで気持ちが盛り上がってきた。この世界の一角で鳴っているはずのタンバリンの音がまるで世界の中心音のように聞こえたところで…。
1曲目「世界中の誰よりきっと」。開演前のタンバリンを呼び水として今度は堂々FANTASTIC 6が世界の中心に躍り出たみたいな。出だしから盛り上げる歌唱パート後、FANTASTIC 6の面々(澤本夏輝、瀬口黎弥、堀夏喜、木村慧人、八木勇征、中島颯太)がステージ段上に揃って座る。上手側端に位置するパフォーマー木村慧人が「何か食べますか?」とキュートな息づかいをふるわせる。この第一声からしてもう耳福。そう、今回の主演俳優は何を隠そう、木村慧人なのだから。
コミカルな芝居と名曲カバーで彩るステージ
芝居パートのあらすじを紹介しておくと、木村演じる主人公が叔父(片桐仁)が所有する稽古場を借りて、そこを支配する逢鳥(水野美紀)から強制的に演技の手解きを受ける。
「稽古始めるぞ!」という木村の掛け声で公演タイトルコール。FANTASTICSリーダー世界振付による2曲目「HOT LIMIT」歌詞フレーズ「妖精たちが 夏を刺激する」の「妖精たち」とはFANTASTIC 6メンバーのマジカルな存在感そのもの。
「夢見る少女じゃいられない」では、八木が下手側中央で客席に対してやや斜めを向いて佇み、視線を下げる。そして「ハートがどこか灼けるように痛いよ」と歌う中島が上手へ移動。この移動、この色っぽさ。
広い世代から愛される「ガッツだぜ!!」ではタイトルフレーズに合わせて手拍子をしながら身体をゆらす下手側の堀があでやか。カバー曲のフレーズだけでなく、台詞にも耳を傾けてみる。
演技レッスンが本格的に始まる場面で「芝居にとって1番大切なもの」と逢鳥が問う。それは「感情を乗せた明瞭な言葉」だと解く。「明瞭な言葉」を訓練するため、メンバーたちによる早口言葉コーナーへ。さらに「英語禁止アクト」なるバラエティコーナーまである。結婚式プランナー役の瀬口と八木演じる新郎と澤本演じる新婦、そこに中島&木村ペアが闖入して、コント番組顔負け、抱腹絶倒の一芝居を打つ。翻って、「恋」→「大阪LOVER」→「ラブ・ストーリーは突然に」の3曲カバーで愛をつむぐ、これもまたバラエティ力のしなやかさかだ。
伝統の延長で活気づくアクチュアルな最高地点
この総合力、この大衆性、この人懐こい魅力。思うにこれは舞台芸術の伝統に根ざしている。古くはヨーロッパの歌劇(オペラ)。元々貴族文化だったオペラがすでに大衆化していた18世紀、ポピュラー音楽の先駆け的存在ともいえるモーツァルトが腕を振るったのがジングシュピール。日本語に訳すと、歌芝居、または大衆歌劇。その後オペラは総合芸術にまで高められ、アメリカのミュージカルの源流にもなっていく。
クラシック音楽監修者の立場から見ると、『BACK TO THE MEMORIES』はその伝統の延長で活気づく大衆性のアクチュアルな最高地点だとぼくは考えている。
本公演クライマックス、主演俳優である木村慧人が「HANABI」歌唱パート前に長台詞を終えると、バックモニターには彼の汗と涙が一瞬写る。さらに「HANABI」で下手で踊っていた木村が上手へ移動する瞬間、この慎ましいアクロバティックな移動に歌と踊りと芝居の極まり、なおかつ大衆性が華やぐエンターテイメントの白眉を見た。
【著者プロフィール:加賀谷健】
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修
クラシック音楽を専門とする音楽プロダクションで、企画・プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメン研究」をテーマに、“イケメン・サーチャー”として、コラムを執筆。女子SPA!「私的イケメン俳優を求めて」連載、リアルサウンド等に寄稿の他、CMやイベント、映画のクラシック音楽監修、解説番組出演、映像制作、テレビドラマ脚本のプロットライターなど。
2025年から、アジア映画の配給と宣伝プロデュースを手がけている。
日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。
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【了】