初回から林遣都の台詞がつき刺さる…福原遥の「設定」に思わず唸ったワケ。『明日はもっと、いい日になる』第1話考察&感想【ネタバレ】
福原遥が主演を務める月9ドラマ『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ系)が放送開始した。本作は、児童相談所に出向となった刑事が、こどもたちとその親と向き合い、ともに成長していく姿を描いた完全オリジナルストーリーだ。今回は1話のレビューをお届けする。(文・古澤椋子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
——————————
児童相談所への思い込みを覆す
児童相談所と聞いてどんなイメージが浮かぶだろうか? 恥ずかしながら、筆者も『明日はもっと、いい日になる』の主人公・夏井翼(福原遥)と同じように、助けを求めた子どもが暗いまま過ごしている場所という印象があった。『明日はもっと、いい日になる』第1話は、そんな思い込みを覆してくれた。
幼い頃から正義感が強く、刑事になることを夢見ていた翼。強盗犯を追い詰めて見張っているときに、痴漢被害に遭っている女子高生を助けたことで、強盗犯を逃してしまう。翼の上司・作間(飯田基祐)の言葉を借りれば、自分の正義感をうまく扱えない人物だ。
そんな翼は浜瀬市児童相談所に出向することに。実際に警察と児童相談所には人事交流があるようだ。単なる新人児童福祉司を主人公とするのではなく、不本意なまま児童相談所に出向することになる刑事・翼を主人公とすることで、児童相談所の価値観と翼の価値観のすれ違いを描くことができる。上手い設定だ。
児童福祉司は「招かれざる客」
翼の教育係になったのは、児童福祉司の蔵田(林遣都)だ。鼻にティッシュを詰め、頬を赤くした状態で登場した蔵田は、どこか値踏みするような視線を翼に向ける。洗礼を受けつつ、担当家庭に訪問する翼と蔵田。そんな時、“泣き声通告”が入る。“泣き声通告”とは、子どもの泣き声を心配した近隣住民から入る通告のことで、命の危険を考慮して48時間以内に子ども無事を確認せねばならない。
翼と蔵田が伺った自宅には、芳村加奈(徳永えり)と息子・拓斗(土屋陽翔)が暮らしていた。拓斗の足には、大きなアザが。少し元気のないように見える拓斗の表情と、焦りからか不遜な態度をとる加奈。
翼は、拓斗のアザから虐待を疑う。「正義感の扱い方も知らない人を現場に連れていくのは危ないので」と、蔵田に強い語気で突き放されてしまう。環境が変わっても翼の気質はなかなか変わらない。
落ち込む翼に声をかける浜瀬市児童相談所のメンバーと児相に併設された一時保護所の課長兼保育士・南野丞(柳葉敏郎)。少しずつ児童相談所の状況に適応できるように、翼自身も周りからかけられる言葉をゆっくりと咀嚼しているように見える。強盗犯の聞き込み中に偶然加奈に出会ってしまったことで、苦情の電話がきたと蔵田から言われたときも深く頭を下げた。
児童福祉司は「招かれざる客」。子どもの命を守るためにも、虐待を疑い早期に対応するのは大切なことだが、必死に育児をしている親のプライドを傷つけてしまう可能性もある。だからこそ、慎重に親と子に関わらなければならない。親子に対して核心を突こうとしない蔵田のコミュニケーションもそこから来るのだろう。
拓斗(土屋陽翔)の怪我は虐待によるもの?
翼が児童相談所での仕事のあり方について考えていたなか、虐待通告を知らせる音が児童相談所に鳴り響く。それは拓斗の被害を知らせるものだった。
拓斗の「ママに叩かれた」という証言と児童相談所に乗り込んでくる態度は、翼からは被害者と加害者に映ってしまう。しかし、いくら虐待だったとしても、被害者と加害者ではない。家族であり、親と子だ。そこにある関係性と問題に目を向けるしかない。
拓斗は母と生活することを極度に嫌がる。しかし、大きなベッドで眠るその寝顔には涙の跡があり、食事も摂れていない様子で何か別の事情が潜んでいそうだが、頑なに口を噤む。そんな矢先、加奈が過労で倒れたという報告が。3年前に離婚し、女手一つで拓斗を育ててきた加奈。
別れた夫からの養育費も振り込まれず、1日12時間働き、平均睡眠時間3時間。常にイライラした態度を見せていたのには、そういう理由があった。余裕のない生活の中、拓斗が帰ってこなかったことで取り乱した加奈は、思わず拓斗を叩いてしまう。足にあったアザは加奈の手によるものではなかったのだ。
「拓斗くんを幸せにする未来でなく、拓斗くんと幸せになる未来を」
一時保育所を抜け出してしまった拓斗は、海で“ニコちゃん”を探していた。翼はすぐに報告せずに一緒に探していた。拓斗が保育所に連れ戻された後、翼は必死に“ニコちゃん”を探す。自分の気持ちに寄り添ってくれる翼の姿が、拓斗の心を動かす。
拓斗は、海で加奈からもらったニコちゃんマークのついたお守りで探していたのだった。加奈からニコちゃんマークのついたお守りをもらったことで元気になれた拓斗は、忙しそうな加奈に元気になってもらいたくて、ニコちゃんマークを描いたパンケーキを作ろうとしていたのだ。
しかしうまくいかず、部屋を汚してしまい、倒れた椅子で足にアザを作ってしまった。その不甲斐なさから泣いていた拓斗の声を聞いた隣人が、泣き声通告をしていたのだった。ママに幸せになって欲しいという思いから、お守りを海に捨て、自分と母が強制的に引き裂かれるような嘘をついていたのだ。拓斗の「泣いているママも怒っているママも見たくない」という拓斗の言葉からは加奈への大きな愛が伝わってくる。
加奈は12時間の労働と3時間の睡眠だけでなく、拓斗には手間のかかる料理をして、自分の食事もままならない状態で生活していた。靴も買い替えずにボロボロのままだ。拓斗のために弱音を吐かず、完璧なお母さんでいようとしたのに、目的がすり替わってしまっていたのだった。拓斗の「ママに笑っていてほしい」という本音が、加奈の心に届き、2人は無事和解することができた。
加奈の自宅では宅配ピザを食べる2人の姿があり、玄関には加奈と拓斗のピカピカの靴が並ぶ。「拓斗くんを幸せにする未来でなく、拓斗くんと幸せになる未来を目指しましょう」という蔵田の言葉には、児童相談所の意義そのものが詰まっているように感じられた。
【著者プロフィール:古澤椋子】
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
【関連記事】
・【写真】福原遥&林遣都の眼福ショット…貴重な未公開カットはこちら。『明日はもっと、いい日になる』第1話劇中カット一覧
・歴代最高の“フジ月9”ヒロインは? 演技が最高だった女優5選。生き様に惚れる…女性が憧れる”理想の宝石”たちをセレクト
・歴代最高の月9ドラマは…? 最も面白い作品5選。これぞ伝説の名作…世代を超えて語り継がれる珠玉の作品をセレクト
【了】