「骨太な物語は評価、だが人物造形に課題あり」中川真知子(映画×テクノロジーライター)|映画『キャンドルスティック』マルチレビュー
公開中の話題作を4人の評者が“忖度なし”で採点する新企画「映画チャンネル」マルチレビューがスタート! 記念すべき第1回は、日本と台湾の共同制作による阿部寛主演作『キャンドルスティック』を徹底レビュー。果たしてその評価は? 点数とあわせて、本作の魅力と課題を多角的に掘り下げる。※評価は5点満点とする。(文・編集部)
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骨太な物語は評価、だが人物造形に課題あり
中川真知子(映画×テクノロジーライター)
【採点評価】2・5点
AIを騙す、というよりは日本がいかに搾取されているのかを描いた作品。その視点で見るなら悪くはない。また半導体競争、株価操作、AIの脆弱性など本作で断片的に語られた背景を理解していれば重厚感ある物語だと感じられた。だがエンタメとして楽しもうとすれば努力すべき点が山ほどあった。まず登場人物がほとんど掘り下げられていない。揉めている理由や犯罪に加担するモチベーションが不明瞭。上映時間を延ばしても説明すべきだった。
また難民・移民の子のハウスの件は完全に蛇足。もう少し丁寧に語られなければ不法移民の国際犯罪グループとしか受け取れない。問題提起するために入れたのだろうか。テーマは悪くないのに全体的に勿体無い。
【著者プロフィール 中川真知子】
映画xテクノロジーライター。アメリカにて映画学を学んだのち、ハリウッドのキッズ向けパペットアニメーション制作スタジオにてインターンシップを経験。帰国後は字幕制作会社で字幕編集や、アニメーションスタジオで3D制作進行に従事し、オーストラリアのVFXスタジオ「Animal Logic」にてプロダクションアシスタントとして働く。2007年よりライターとして活動開始。「日経クロステック」にて連載「映画×TECH〜映画とテックの交差点〜」、「Japan In-depth」にて連載「中川真知子のシネマ進行」を持つ。「ギズモードジャパン」「リアルサウンド」などに映画関連記事を寄稿。
【了】