「吹き替えキャリアと向き合うきっかけになった」映画『スーパーマン』声優・武内駿輔が語る”声の表現”を突き詰めた瞬間とは?

text by タナカシカ

ジェームズ・ガン監督がメガホンを取った完全新作映画『スーパーマン』が、現在公開中。今回は、本作の主人公であるスーパーマンこと、クラーク・ケントの声を担当した、声優の武内駿輔さんにインタビューを敢行。収録現場の裏話や、吹き替えのキャリアと向き合うきっかけとなった本作への想いをたっぷりとお聞きした。(取材・文:タナカシカ)

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ジェームズ・ガン作品にまた関われるという高揚感

武内駿輔 写真:武馬怜子
武内駿輔 写真:武馬怜子

―――武内さんは、ジェームズ・ガン監督の前作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3』(2023)でも敵キャラクターであるアダムの吹き替えを担当されていました。そんなジェームズ・ガン監督の新作で、今度はスーパーマンという世界的なヒーローの声を務めることになりましたが、決定したときどのようなお気持ちでしたか?

「ジェームズ・ガンの作品がもともと大好きだったので、また彼の世界観に関われることがすごく嬉しかったです。そういう意味でも、最初にティザームービーを見たときから『今回のスーパーマン、めちゃくちゃ面白そうだな』と感じていて。だから、ボイステストに合格したと聞いたときは、不安というより、もう純粋にワクワクの気持ちがすごく大きかったですね。たぶん、それが1番強かったと思います」

―――スーパーマンを演じたデイビッド・コレンスウェットさんや、ジェームズ・ガン監督とはお話しする機会はありましたか?

「いえ、なかったです。本作のスーパーアンバサダーのチョコプラさんにはメッセージをいただいていたみたいなんですけど、僕はスーパーアンバサダーじゃなかったので…。次回こそは、しっかり2ヶ月かけてアンバサダーをしてから、お会いしたいなと思ってます(笑)」

吹き替えキャリアと向き合うきっかけとなった作品

武内駿輔 写真:武馬怜子
武内駿輔 写真:武馬怜子

―――2022年からDCスタジオのCEOに就任したジェームズ・ガン監督のもと、今後のDC作品はより彼らしい世界観が色濃く反映されていくと推測します。そんな注目作への出演は、武内さんにとってもキャリアの中で大きな意味を持つ作品になったのではないでしょうか?

「非常に意義のある作品だと思っています。もともと、吹き替え作品がすごく好きで、DCコミックの作品にもぜひ携わってみたいと思っていたんです。これまでも、色々な役に挑戦させていただきましたが、特に今回の作品では、自分の“吹き替えキャリア”にしっかり向き合う時間をもらえたと思っています」

―――収録中も、演技とじっくり向き合えるような環境や、やり取りがあったのでしょうか?

「難しいシーンは多かったのですが、特に印象に残っているのは、実はアクションではなく、物語冒頭の同僚でもあり恋人でもあるロイス・レイン(レイチェル・ブロズナハン、日本語吹き替え:種﨑敦美)との口論のシーンなんです。正義について、1人の人間としてぶつかり合う場面で、感情の温度や言葉の選び方が非常に繊細で難しかったですね。

三好慶一郎音響監督も『ここをいちばん丁寧にやろう』と時間をかけてくださり、録音した音をすぐに返してもらいながら、映像と声を何度も重ねて確認する作業を地道に繰り返しました。その過程があったからこそ、今回の作品は“吹き替え演技”と深く向き合えた、特別な1本になったと感じています」

スーパーマンが貫いた「信じる力」に込めた思い

武内駿輔 写真:武馬怜子
武内駿輔 写真:武馬怜子

―――人を救いたいという強い正義感を持つ一方で、物語冒頭では敗北する姿や、ロイスとの激しい口論など、“人間的な弱さ”も垣間見える今回のスーパーマン。そういった振れ幅のあるキャラクターを演じるうえで、意識されたことはありましたか?

「やっぱり今回は、“相手を信じる気持ち”というのが、特に重要なテーマだったと思います。先ほどの話にもあったように、ロイスからその点を指摘される場面もありましたが、それでもスーパーマンは、誰よりもその信念を貫く存在として描かれていたと感じました。たとえどんな相手であっても。

宿敵のレックス・ルーサー(ニコラス・ホルト、日本語吹き替え:浅沼晋太郎)に対しても『人間としての自分の強さの源はここにある』としっかり訴えかける場面があって、もしかしたらスーパーマンは、レックス・ルーサーとも、どこかで“対話できる可能性”を信じているのではないかと僕は解釈しました。そういった『人を信じる姿勢』は、演じる上でも大切にしたいと思った部分です」

―――最後に、「映画チャンネル」にご登場いただいたということで、好きな映画や最近観た映画があれば教えてください。

「DC作品では、ティム・バートン監督の『バットマン』(1989)や、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』(2008)が特にお気に入りです。『ウォッチメン』(2009)の実写版も何度も観るほど惹かれています。

それから最近、今さらながら『ハリー・ポッター』シリーズを1作目から観返したんです。『こんなに面白かったんだ!』と感動してしまって…。特にシリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン)が亡くなるシーンなんて、翌日まで気分を引きずるほどでした。これほどの長編シリーズが美しく完結しているというのも本当に素晴らしいですよね。早くスタジオツアーに行きたいです!」

―――ドラマ版に出演する、子役3名が選ばれたというニュースが、最近話題になっていましたが、吹き替えのお話がきたら、嬉しいのではないでしょうか?

「え! ドラマが決まっているんですか!? もしお話が来たら絶対にやりたいです! 今のこの熱量なら誰にも負けてない自信があります(笑)」

(取材・文:タナカシカ)

【作品概要】

タイトル:『スーパーマン』
7月11日(金)日米同時公開
配給表記:ワーナー・ブラザース映画
監督:ジェームズ・ガン
出演:デイビッド・コレンスウェット、レイチェル・ブロズナハン、ニコラス・ホルト
© & TM DC © 2025 WBEI
#スーパーマン

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【了】

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