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マーベル超えの面白さ…日本で最も偉大なヒーロー映画は? 根強い人気を誇る邦画5選。優れたアイデアに驚かされる作品を厳選   

text by ZAKKY

根強く人気のある「スーパーヒーロー映画」。近年、「ヒーロー疲れ」という言葉が生まれ、ファンが離れる一方、常識を外れた設定や型破りなヒーローの出現により、幅広く支持される作品がある。今回は、定年間近のおじさんや、ダメ男など、常識の枠を外れたことで大成功を収めた、最高のヒーロー映画5選を紹介する。(文・ZAKKY)

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宮藤官九郎によるコリに凝った脚本が最高…。
『キック・アス』に先駆ける和製ヒーロー映画の傑作

『ゼブラーマン』(2004)

哀川翔(東京オートサロン2017より)
哀川翔東京オートサロン2017よりGetty Images

監督:三池崇史
脚本:宮藤官九郎
出演者:哀川翔、鈴木京香、安河内ナオキ、渡部篤郎、大杉漣、市川由衣、渡辺真起子、近藤公園、柄本明、麻生久美子、内村光良、三島圭将、袴田吉彦、古田新太、岩松了、徳井優、古田新太、谷本一、安室真樹子、桑原和夫、殺陣剛太、飯島大介、河野智典、鈴康寛、長坂周、堀田大陸、川原京、渡洋史、出口正義、山地健仁、佐藤祐一、浜口悟、井出雅紀、島田智之介、鎌田篤、はやしだみき、宙英水子、真日龍子

【作品内容】

家庭でも職場でもパッとしない小学校教師・市川新市(哀川翔)。彼は少年期に夢中になって見た、低視聴率のためすぐに打ち切られた幻のヒーロー番組『ゼブラーマン』のコスチュームを自作。それを身に纏い、仕事後に町を徘徊することが趣味であった。ある日、宇宙人と遭遇し、驚愕する新市だが、「ゼブラーマン」として、地球を侵略しようとする宇宙人と戦うこととなる。

【注目ポイント】

男であれば、誰しもが憧れた仲間を守り、世の中を守り、地球を守る完全無敵な「正義のヒーロー」。しかし、現実ではそんなわけにもいかないのは当然なのだが、本作の主人公・市川新市は、その妄想を、ヒーローのコスプレをすることで、まずは自己満足に浸る。

が、なぜかモノホンの宇宙人と戦うこととなり、その中で不思議な力を身に着けるわけだが、ここまでの流れで筆者は真っ先に、1983年に連載していた漫画『ウイングマン』(桂正和/「週刊少年ジャンプ」集英社)を想起した。

同作は、主人公の中学生が異空間から落ちてきた「ドリームノート」に自身が思い描くヒーロー「ウイングマン」を書き記したことにより、夢が叶うというストーリー。脚本を担当した宮藤勘九郎は、世代的にも『ウイングマン』に影響を受けていると推測される。本作ではそんなクドカンによる脚本がなんとも秀逸だ。

新市は宇宙人による地球侵略事件が、34年前に予見されていたことを知る。実は映画序盤で宇宙人に殺された目黒教頭(大杉漣)は、かつてヒーロー番組『ゼブラーマン』の脚本家であり、番組のストーリーは未来で起こる出来事を予見していたのだった。

なぜそんなことが起こったのか。実は目黒教頭は宇宙人であった。しかし、地球を守るために仲間を裏切り、『ゼブラーマン』という番組を通して、侵略計画を地球人に伝えようとしていたのだ…。

ここまでの展開で十分に感じられたかと思うが、メタフィクション仕立ての展開が鮮やかで、娯楽性と芸術性を兼ね備えた脚本が素晴らしい。また、コミカルな設定だが、その実、シリアスな内容となっており、新市みたいな中年男がいてもいいじゃないか! というメッセージ性も強く感じさせる作品である。

ちなみに、「コスプレをして、とりあえずヒーローになりたいイズム」は、後の『キック・アス』(2010)にも、通じるものがある。

低予算でもアイデア次第で面白いヒーロー映画は作れる。その見本となるような作品だ。

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