「夢を叶え続けたい」映画界のホープが語る創作術とは? 映画『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』阪元裕吾監督インタビュー
殺し屋女子2人組の日常を、オフビートな笑いとキレのあるアクションで描き、スマッシュヒットを記録した映画『ベイビーわるきゅーれ』。その続編となる『ベイビーわるきゅーれ 2 ベイビー』が、3月24日より公開される。今回は、今最も勢いのある映画作家の1人である、本作の監督・阪元裕吾さんのインタビューをお届け。最新作の裏話から独自の創作術まで、たっぷり語っていただいた。(取材・文:山田剛志)
【阪元裕吾監督 プロフィール】
1996年生まれ、京都府出身。20歳で発表した『ベー。』で「残酷学生映画祭2016」のグランプリを受賞。ウルトラ暴力映画『ハングマンズ・ノット』では「カナザワ映画祭2017」で期待の新人監督賞と出演俳優賞のダブル受賞。続く、パン屋を舞台にしたブラックコメディ『ぱん。』では「MOOSICLAB」で短編部門グランプリ、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」で短編コンペティション部門グランプリ、「プチョン国際ファンタスティック映画祭」で審査員特別賞を受賞し、大学在学中に圧倒的な暴力描写で自主映画界を席巻。『ファミリー☆ウォーズ』(18)で商業デビュー後、『ある用務員』(20)、『黄龍の村』(21)、『最強殺し屋伝説国岡[完全版]』(21)、『グリーンバレット』(22)を発表し、『ベイビーわるきゅーれ』(21)では日本映画批評家大賞・新人監督賞を受賞するなど、今最も勢いのある映画監督である。
「最初はシリアスなお話を考えていた」
前作との差異に表れる監督のこだわり
―――上映時間101分の中に、沢山のアイデアが詰まっていて、目と耳と思考を存分に楽しませていただきました。続編を手掛けられるのは今回が初めてですか?
「そうですね。スピンオフという形ではなく、正式な続編としては初めてです」
―――まずは続編を作られた経緯からお聞かせください。
「実は、1作目を作っている時から続編の構想は頭の中にあったんです。1作目はテレビアニメの第一話を90分使って贅沢に撮らせてもらった、という感覚でした。
シリーズもののアニメでは、例えば、肝試しの回やラーメン屋を経営する回など、魅力的なキャラクターたちの日常生活を描くだけでも十分に面白かったりするじゃないですか。それと同じように、毎回違うテーマを決めて“ちさと”と“まひろ”の活躍を描くという形式であれば、一生作り続けられると思ったんです」
―――前作に比べてコメディ要素が増えたように感じたのですが、その辺りは意識されましたか?
「実のところ、最初は、シリアスなお話を考えていたんですよ。田舎に行って、銃をバンバン撃って、死が身近に迫る中、2人の絆が試される、といった『ソナチネ』みたいな映画を。でも結局は、コメディパートを増やす方向に舵を切りましたね。製作中は『笑える映画を撮る』というのが、自分の中のキーワードでした」
―――前作との相違点は他にもあります。まず、“ちさと”と“まひろ”の部屋が変わっています。前作は質素な印象だったのですが、続編では部屋中を様々なモノが埋め尽くしており、ゴージャスになっています。また、2人がパフェを食べるシーンに顕著なように、彼女たちの女子力が上がったような印象も受けました。
「今回は、“ちさと”と“まひろ”の対になる存在として、悠里(丞威)と真琴(濱田龍臣)による男性殺し屋コンビが登場するので、両ペアを対比的に見せたいという意図があり、その結果、2人の見せ方に変化を付けました。豪邸の外観を映さなくとも、モノで満たされた室内を見せることで、彼女たちが享受する経済的な豊かさを表現できればいいなと。実は、前作では『高級な水を飲んでいる』という描写を入れたのですけど…」
―――そうなんですか! 気が付かなかったです(笑)。
「誰も気付かないですよね。前作はハウススタジオを使ったんですけど、今作では、映画監督の吉田浩太さんが購入した新築の家をお借りしました。たしか、クランクインの1週間ほど前に完成したんじゃなかったかな。観ていただいたように、大量の美術品を部屋に持ち込ませていただいて…。吉田監督には本当に感謝しています。
それもあって1作目と2作目とでは部屋の間取りが変わっているのですが、なるべく一つの部屋、あるいはソファー上で芝居を完結させるという点では共通しています。また、随所に1作目に登場した小道具を登場させて、前作のファンに気付いてもらえるように目配せをしました」