1980年代最高の日本映画は? 今こそ観るべき珠玉の名作(5)宮崎駿の運命を変えた…「スタジオジブリの顔」

text by 村松健太郎

1970年代、日本映画は深刻な興行不振に直面し、長らく続いたスタジオシステムが崩壊。日本映画全体は停滞期に入る。そんな状況下で迎えた1980年代は、若手監督の登場やベテランの復活、レンタルビデオの普及によって映画の楽しみ方に変化が訪れた。今回は、そんな80年代を代表する日本映画を5本紹介する。第5回。(文・村松健太郎)

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ジブリの運命を変えた国民的アニメ

『となりのトトロ』(1988)

『となりのトトロ』
© 1988 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

監督:宮崎駿
脚本:宮崎駿
出演:日髙のり子、坂本千夏、糸井重里

【注目ポイント】

『風の谷のナウシカ』(1984)の成功を受けてスタジオジブリを設立した宮崎駿は、1986年に『天空の城ラピュタ』を発表。その後、高畑勲監督による『火垂るの墓』(1988)と同時上映という形で、本作『となりのトトロ』が公開された。公開当初はそれほど大きな興行成績を残さなかったものの、作品の人気は次第に高まり、グッズが飛ぶように売れるなどして定番作品として定着。最終的には「スタジオジブリの顔」とも言える存在となり、のちにトトロはスタジオのシンボルマークにも採用された。

 本作はアニメーションでありながら、実写映画を含むあらゆる作品の中で高い批評的評価を獲得し、キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画部門および読者選出部門の両方で1位に選出されるという快挙を成し遂げた。

 物語は、病気療養中の母を見守るため、田舎の古民家に引っ越してきた姉妹・サツキとメイを中心に展開する。ある日、妹のメイが家の庭で小さな不思議な生き物を目撃し、追いかけた先で巨大な生物と出会う。メイはその生き物を「トトロ」と呼び、それが名前だと信じ込む。最初は信じなかった姉のサツキも、バス停で同じ生き物に遭遇したことをきっかけに、姉妹は不思議な存在たちと交流を深めていく。

 意外に思われるかもしれないが、ジブリ設立当初は経営的に厳しい状況が続いていた。だが『となりのトトロ』のグッズ収入が軌道に乗ったことで経営は安定し、次作『魔女の宅急便』(1989)のヒットで勢いを加速。以降も『もののけ姫』(1997)、『千と千尋の神隠し』(2001)、『ハウルの動く城』(2004)など、宮崎駿作品を中心に数々の大ヒット作を送り出し、スタジオジブリは日本を代表するアニメーションスタジオへと成長していった。

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【了】

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