プロが選ぶ「本当に面白い2010年代の邦画」5選。目を見張るクオリティ…日本映画史に燦然と輝く名作をセレクト
text by 村松健太郎
2010年代の日本映画には、ジャンルの枠を超えて観客の心を揺さぶる傑作が数多く誕生した。伝統的な時代劇の刷新から、言葉と向き合う静かな人間ドラマ、無名俳優のリアリズム、怪獣映画の再定義、さらには世界の映画祭を沸かせた感動作まで。今回は、そんな10年の間に生まれた日本映画の金字塔を振り返る。(文・村松健太郎)
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東映伝統の名作を三池崇史が現代に再生
『十三人の刺客』(2010)
監督:三池崇史
脚本:天願大介
キャスト:役所広司、松方弘樹、山田孝之、伊勢谷友介、沢村一樹、古田新太、高岡蒼甫、六角精児、稲垣吾郎
【注目ポイント】
1963年に工藤栄一監督・片岡千恵蔵主演で製作された、東映による“集団抗争時代劇”の代表作を、2010年に三池崇史監督が新たにリメイクしたのが映画『十三人の刺客』である。
オリジナル同様に本作も豪華キャストが集結。役所広司をはじめ、松方弘樹、山田孝之、伊勢谷友介、沢村一樹、伊原剛志、斎藤工、内野聖陽、平幹二朗、松本幸四郎(当時)、市村正親、稲垣吾郎といった実力派が名を連ねた。
物語は江戸時代後期、将軍の異母弟である松平斉韶の暴虐が問題視される中、彼が老中就任を目前としている状況に危機感を覚えた老中・土井大炊頭が、御目付役・島田新左衛門に密命を下すことから始まる。新左衛門は13人の刺客を募り、参勤交代の途上にある斉韶の一行を迎え撃つことを決意する。
本作の見どころは2つ。まずはクライマックスとなる、40分以上にもおよぶ壮絶な殺陣のシークエンスだ。刺客たちは宿場町をまるごと買い取り、一種の要塞と化した空間を舞台に、圧倒的な兵力差を戦術と地の利で覆していく。
そしてもう1つの見逃せないポイントが、稲垣吾郎による松平斉韶の怪演だ。アイドルとして活動中だった彼が、狂気を宿した凶悪な暴君を見事に演じ切り、そのギャップと存在感で観る者に強烈な印象を残した。
三池崇史監督の鋭い演出、脚本・天願大介による重厚な構成、そして出演陣の熱量あふれる演技が渾然一体となった本作は、時代劇の枠を超えた圧巻のエンターテインメントに仕上がっている。