「チャンスを逃す選択肢が私にはない」ドラマ『愛の、がっこう。』主演・木村文乃が語る、芸能の道を歩む信念とは? インタビュー
フジテレビ系木曜劇場枠<毎週(木)22時~22時54分>で放送中のドラマ『愛の、がっこう。』。本作は、まっすぐすぎる高校教師が、真逆の世界を生きるホストと出会い、惹かれていく新たな純愛ドラマだ。今回は、主演を務める木村文乃さんにインタビューを敢行。“愛実”というキャラクターを通して、本作の魅力を存分に語って頂いた。(取材・文:於ありさ)
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『愛の、がっこう。』が持つ安心感
―――ドラマ放送開始後、周りからの反響を教えてください。
「癒やし効果があると言われて、おもしろいなと思いました。今まで、いわゆる恋愛ものの作品に出演した経験があまりなかったのですが『愛の、がっこう。』に関しては、いわゆる恋愛ものというよりも、人と人とが関わり合って必死に生きていく中に、愛が1つの要素としてあるという意味合いが大きいのかなと思っています。
実際『恋愛ものってどう見ていいかわからない』と思っていた周りの人たちも、安心して見てくださっているみたいです。それぞれの登場人物に対して“あーあるよね。そういうところ”って共感するとも言われます」
―――木村さん自身、まだ結末を知らないとお伺いしていますが、結末を知らないまま演じることは役者として難しいですか?
「結末があった方が、より深くはできると思います。物語が進んだ後で“あのときのセリフ、もっとこういう言い方があったな”と思ってしまうというか。でも、そんなことを言ったら、自分の仕事の幅を狭めちゃいそうで嫌なので、私はあまり結末を気にしすぎていないようにしています。実際、先の物語がないと順取りで撮れるという部分はメリットですしね」
愛実を知る旅をしている
―――木村さんは、愛実というキャラクターをどのような人だと捉えていますか?
「人生を遠回りしている人だなと感じています。小学生の頃って、通学路の近道を探すじゃないですか。藪の中を潜って見たり、塀を乗り越えたり…。対して、愛実は整備されたところを歩きながら、実はそういう普段とは違う景色に憧れている、選択しようと思えばできるのに、その選択肢を取らない人なのかなと思っています。だからこそ、物語の前半でカヲルさんの奔放さに惹かれているんだろうなって。手を取って引っ張り上げてもらうわけじゃないけど、心を持ち上げてくれるような部分に心地のよさを感じているんだろうなと感じています」
―――木村さん自身は、愛実のキャラクターをすぐに理解することができましたか?
「愛実でいる時間を重ねてきた今、迷うことはないですが、最初は私自身にもない要素が多いですし、私の周りにもいないタイプなので、どう演じたらいいか悩んでいました。愛実を知る旅をしている感覚で演じています」
―――愛実は自分の失敗を言えるタイプの大人だなという点も印象的です。
「愛実に関しては自由になりたい人なので、どっかで誰かに聞いてもらえるタイミングを探していたのかもとは思います。それをカヲルさんがくれたのかなと。トラウマって、自分の中に閉まっていたら、ずっと心を傷つけ続けるものですけど、口に出しちゃうと、出ていってくれる点もあるじゃないですか。だから笑い飛ばしてくれる人が現れるのを、ずっと待ってたんだろうなって思います」
「チャンスを逃す選択肢が私にはない」
反対されてでも選んだ芸能の道
―――純粋ではあるものの、子どもすぎないバランス感覚が素敵だなと思います。
「そこは井上由美子さんの脚本が素晴らしいからかなと思います。きっと、この脚本的に2人して子どもみたいに無邪気にやっていた方が楽なんですよね。でも、どっちもちゃんとブレーキをかけるんです。
カヲルさんは自分が一緒にいることがいいと思っていないっていうブレーキを、愛実は教師だから一線を越えてはいけないっていうのが、どんなシーンにも絶対にあって、だから無邪気すぎないんだと思っています。それをやらないでも成立はするんでしょうけど、きっとみなさんがいいと思っている2人の関係性は壊れていっちゃうので、その線引きのタイミングとかは意識するようにしています」
―――キービジュアルのキャッチコピーに「この恋は、誰にも祝福されない。」と書いているのが印象的です。木村さんは「誰にも祝福されない」状況でも自分を突き通すタイプですか?
「それこそ、芸能界に入るときですかね。親がすごく反対していたんですが、チャンスがあったので、そのチャンスを逃すっていう選択肢が私にはなくて、半ば強引にこの活動を進めたんです。
ただ『アダン』(2006)という映画を撮影した時に、五十嵐匠監督が“お母さんとちゃんと膝を突き合わせて、1から説明して話したのか。ちゃんと話してきなさい”っておっしゃって、それをきっかけに話をさせてもらったら理解してもらいました。“あなたはいつも結論からしか言わないけど、ちゃんと話してくれたらわかるんだから”と言われて。そこからは応援してくれています」
「先生のような気持ちで構えています」
共演するラウールの素直さ
―――相手役であるカヲルという役に対して、どのような印象を持っていますか?
「“普通”の価値観にとらわれてないところが愛実にとっては全部新しいんだろうなと思っています。字を教えることが、物語の序盤だと恋愛要素の1つだと思われているでしょうけど、そうではなくて、そこが恋との違いなのかなって。たぶん字を教えているところの終着点なのかなっては思っています」
―――カヲルを演じるラウールさんの印象は、撮影を通して変わりましたか?
「最近は緊張せずにいられる時間が増えてきた印象があります。最近は同じシーンも増えてきて、さりげない会話とかも増えてきたというか。あとは、1話の屋上のシーンをワンカットで撮った後で“あー感動しちゃった!”って言ってて。それがラウールさんとしてなのかカヲルさんとしてなのかはわからないですが、思ったことを素直に口に出せるのっていいなと思いました。それから、すごくのびのびとお芝居していて、たまにアドリブもされるので、私としては“あ、そう来るんですね”と先生のような気持ちで構えています」
【著者プロフィール:於ありさ】
ライター・インタビュアー。金融機関、編プロでの勤務を経て2018年よりフリーランスに。サンリオ・アイドル・恋愛コンテンツ・ガールズカルチャー・テレビ・ラジオ・お笑い・サッカーが好き。マイメロディに囲まれて暮らしている。