科学が結んだ最強タッグが胸アツ…松雪泰子“尾藤”との協力関係で導いた真相とは『最後の鑑定人』第6話考察&感想【ネタバレ】
藤木直人主演のドラマ『最後の鑑定人』(フジテレビ系)が放送中だ。藤木演じる敏腕鑑定人が、白石麻衣演じるウソを見抜くのが得意な研究員とともに、科学的アプローチを駆使して難事件の真相を暴いていく本格サイエンス×ミステリー。今回は第6話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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2人の科学捜査官
『最後の鑑定人』第6話は、事件そのものよりも、土門(藤木直人)と尾藤(松雪泰子)という2人の科学捜査官としての違い、そして歩み寄りが際立っていた。
土門と尾藤が恩師である科学捜査研究所の所長・加賀正之(佐戸井けん太)から呼び出され、鑑定を頼まれることに。これまでも土門が尾藤の手を借りることはあったため見落としがちだが、正式にタッグを組むのは初めて。変わり者の土門に「鑑定の神様」と言わしめ、元夫婦に手と手を取らせる加賀はなかなかの凄腕かもしれない。
土門と尾藤はともに鑑定に関して非常に優秀であることが強調されてきたが、今回の第6話では科学的アプローチが微妙に異なるのが興味深い。
神奈川の山中で発見されたバラバラ白骨遺体について、尾藤はすぐに遺体の年齢から凶器の形状までを判定。これまでの経験や知見が鑑定を手助けし、結論を出す速度を上げているのだろう。
そんな尾藤に「早ければいいってもんじゃない」と小言を漏らした土門は、より鑑定“原理主義者”とでも呼べるだろうか。自身の経験というよりはあくまでも証拠が最優先で、だからこそ尾藤がひとつの結論を出した後でもフィールドワークとして現場に足を運びたがった。しかし、結果としてそれが尾藤の反発を招き、険悪な空気が流れてしまう。
きっとどちらかが秀でていて、どちらかが劣っているということはない。そのバランスが大事で、うまい具合に両方を取り入れることで鑑定人としてのスキルが磨かれていくのだろう。そして、白骨死体の事件に関しては尾藤がより土門に歩み寄ったように見えた。
土門と尾藤が導き出した答え
2人でフィールドワークを行った結果、“あるはずのない”花びらを発見。それが解決の糸口となり、事件はバラバラ殺人ではなく、白骨になってからバラバラにして埋められたという答えにたどり着く。考えてみれば、そっちのほうが簡単で手っ取り早いのだが、“バラバラ殺人”という固定観念が邪魔をすると案外盲点となる。
土門と尾藤、どちらか一人でも自分の道を信じ続けてしまっていたら、導き出せなかったゴールかもしれない。
もっとも、土門がいつまでも成長しないままのただの“空想科学少年”だとは思わない。
尾藤と2人きりで喋る時間が長くなる中、離婚したのは尾藤に研究に専念してもらいたかったのだと明かす。尾藤が反論するように対話すればいいだけだったのだが、過去の過ちを告白し反省する土門だって彼なりに尾藤に歩み寄ろうとしているのではないだろうか。
土門にとっては人間関係も鑑定もさして変わらないのかもしれない。なにかが足りなくても、少しずつ復元すれば、見えなかったものがまた見えてくる。尾藤とやり直すことは考えてなくとも、いい関係に戻れるということは信じているようだ。それは思わず笑顔を見せた尾藤もきっと同じはずだ。2人であれば、夫婦や元夫婦という形に縛られない、新しい関係を見つけられると確信さえできる。
2人を結びつけた化学
「鑑定の神様」加賀はここまで見据えて「最強のタッグ」再結成を促したのだろうか。真実はわからないが、科学は2人をたしかに結びつけた。衝突ではなく補完関係で今回の鑑定は結末を迎え、バディ再結成は、「科学は一人では完成しない」というメッセージにも見えた。
ラストでは尾藤がイギリス行きを延期し、2人はともに笑顔を交わす。科学はときに地味で無機質にも感じられるが、その奥には人間同士の信頼と温度がちゃんとあることがよくわかる。単に尾藤が日本に残ることで、これからも土門との丁々発止のやり取りが見られることも救いだ。
第7話では、土門は鑑定を通してなにを見ることになるのか。「科学への冒涜だ」と怒る土門の行く末に最後まで注目したいところだ。
【著者プロフィール:まっつ】
1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。