上白石萌音&當真あみが尊い…”奏”と”めぐる”の関係性に羨ましさを感じるワケ。『ちはやふる-めぐり-』第6話考察&感想【ネタバレ】

text by 苫とり子

當真あみが主演を務める7月期水曜ドラマ『ちはやふる-めぐり-』。本作は、競技かるたに青春をかける高校生たちの姿を熱く描いた、映画シリーズから10年後、バトンを受け継いだ令和の高校生たちの青春を描くオリジナルストーリーだ。今回は、第6話のレビューをお届け。(文・苫とり子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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奏(上白石萌音)との別れ

『ちはやふる-めぐり-』第6話©日本テレビ
『ちはやふる-めぐり-』第6話©日本テレビ

<たち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば いま帰りこむ>は、因幡守に任ぜられた中納言行平(在原行平)が京都から赴任地へ向かう際に詠んだもの。

 因幡の峰に生えている松のように、あなたが待っていると聞いたらすぐに戻ってこよう。

 そんな自分の帰りを待ってくれている人たちとの再会を願う行平の気持ちが込められたこの歌は、紙に書いて玄関口に貼ったり隠しておくと、いなくなってしまった人やペットが戻ってくる“おまじない”として古くから知られている。

 めぐる(當真あみ)が部室を掃除中に本の隙間から見つけた札は一体誰が忍ばせたものだったのだろう。『ちはやふるーめぐりー』第6話では、梅園かるた部の部員たちと奏(上白石萌音)の別れが描かれた。

高校3年生になっためぐる(當真あみ)たち

『ちはやふる-めぐり-』第6話©日本テレビ
『ちはやふる-めぐり-』第6話©日本テレビ

 4月になり、めぐるたち梅園かるた部の5人はそろって高校3年生に。袴姿で気合いを入れて新入生の勧誘に勤しむが、部室に訪れたのはただ1人だけだった。

 しかも、その唯一の新入生である八雲(坂元愛登)は前髪をやたらと気にするおしゃれ男子で、目当ての袴が着れないと分かるとすぐに帰ろうとするのをめぐるたちは必死で引き留める。

 千早(広瀬すず)たちも3年生の頃、太一(野村周平)目当ての恋する乙女・菫(優希美青)や、競技かるたの経験者であるがゆえにプライドが高い秋博(佐野勇斗)ら一癖のある新入生たちにほとほと困らされていたのが懐かしい。

 たかが1、2歳の差と言えども、先輩の立場になると世代間ギャップを感じてしまうのは“部活あるある”なのだろうか。

 一方で、八雲はかるた会に所属する経験者で、すでにA級選手であることが判明。何としてでも手に入れたいめぐるたちは、袴を着せてあげるという条件で八雲を入部させることに成功する。

 かたや奏は育休中だった古文の教師・島強(波岡一喜)が予定よりも早く復帰し、非常勤講師としての契約が終了。今後はボランティアコーチとしてかるた部をサポートすることに。そんな奏の指導のもと、即戦力を獲得した梅園かるた部は東京予選大会優勝に向けて突き進んでいくつもりだった。

奏に訪れた転機

『ちはやふる-めぐり-』第6話©日本テレビ
『ちはやふる-めぐり-』第6話©日本テレビ

 ところが、奏が憧れの専任読手で古典の研究者である中西(富田靖子)から助手にならないかと誘われていることをめぐるは知る。もともと中西の研究室で働きたかった奏にとっては願ってもない話。

 しかし、奏が京都に行ってしまったら、めぐるたちは指導者を失ってしまう。そのことが、すっかり絆が深まったかるた部に亀裂が入ってしまうのだ。

 これは想像に過ぎないが、<たち別れ>の上の句の札を本の間に挟んだのは草太(山時聡真)ではないだろうか。先輩たちが引退してから、部活の存続をかけて奏と二人で奔走してきた草太。

 奏にそばにいてほしいという気持ちは部員の中で誰よりも強いはず。まだ迷っている奏に対して結論を急いだり、奏を引き止めようとしないめぐるを「冷たいよ」と責めたり、一見子どもっぽく感じられる行動も高校生なら致し方ないことだ。

 けれど、そんな草太に「先生も一人の人間なの。自分の夢を追ってもいいはずでしょ」とめぐるは訴える。

めぐると奏の世代を超えた友情

『ちはやふる-めぐり-』第6話©日本テレビ
『ちはやふる-めぐり-』第6話©日本テレビ

 自分が高校生だった頃、先生はたとえ新任であっても随分と大人に見えていた。しかし、奏はまだ25歳。すっかりその年齢を超えた筆者は、先生は完璧で偉大な人だと思い込んでいたあの頃の自分を幼く思う。

 夢と現実との間で迷える先生を前にして、めぐるのように背中を押すことなどできただろうか。いつも自分の気持ちより他人の気持ちを優先してきためぐるは、奏の葛藤が手に取るようにわかるのだろう。

 約千年前に生まれた百首の歌が巡り巡って、大切な人の縁を繋いでくれた。その壮大な物語をつないでいく名もなき一人になりたい。そんな奏の夢をどうしても叶えてあげたいというめぐるの思いは草太も含め、みんなの気持ちを動かした。

 奏が安心して京都に行けるように、めぐるたちが昇級を目指して試合に挑む展開は、映画『帰ってきたドラえもん』のようだ。誰かが別れの寂しさを押し殺して、大切な人を笑顔で送り出そうとする姿はどうしてこうも胸を打つのだろうか。

「本当なら、私が藍沢さんの澪標にならなきゃいけなかったのに、いつの間にか逆になっていました」

 めぐると奏の間に生まれた世代を超えた友情。青春から遠ざかって久しい自分は、どこかでめぐるたちの姿が羨ましく思えていた。

 けれど、「かるたで宝物を見つけた人には10年先で明るい未来が待っている」という澪標に身を尽くしてなるために旅立った奏は同時に、私たちにも「大人になっても青春はできる」とその身をもって示してくれる。

【著者プロフィール:苫とり子】
1995年、岡山県生まれ。東京在住。演劇経験を活かし、エンタメライターとしてReal Sound、WEBザテレビジョン、シネマズプラス等にコラムやインタビュー記事を寄稿している。

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