「サービス精神が裏目に出た構成」中川真知子(映画×テクノロジーライター)|映画『事故物件ゾク 恐い間取り』マルチレビュー

公開中の話題作を4人の評者が“忖度なし”で採点する新企画「映画チャンネル」マルチレビュー。今回は、Snow Man・渡辺翔太が初の単独主演を務める映画『事故物件ゾク 怖い間取り』を徹底レビュー。果たしてその評価は? 点数とあわせて、本作の魅力と課題を多角的に掘り下げる。※評価は5点満点とする。(文・編集部)

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サービス精神が裏目に出た構成

中川真知子(映画×テクノロジーライター)

【採点評価】2.5点

 ティーン向けホラーとしてはそれなりに恐いのかもしれない。不調和音を伴うジャンプスケアによりビックリさせられるシーンはあった。ただドラマパートが怖さを半減させ中弛みを発生させていた。事故物件の怖さとは、住居人の想像力に起因することが多いので、住み続ける中で違和感を覚え時間をかけて精神衰弱していく様子を描けていたら、もっと観客の心にアプローチできていたと思う。

 また、いくつもの物件を紹介するパターンは冗長で流石に3軒目で飽きてきた。原作の特質上仕方がないのだとは思うが、たくさん見せたいサービス精神が裏目に出ていた感がある。最初に登場した家にフォーカスしてもらえたらもっと怖い仕上がりになったはずだ。

【著者プロフィール 中川真知子】
映画xテクノロジーライター。アメリカにて映画学を学んだのち、ハリウッドのキッズ向けパペットアニメーション制作スタジオにてインターンシップを経験。帰国後は字幕制作会社で字幕編集や、アニメーションスタジオで3D制作進行に従事し、オーストラリアのVFXスタジオ「Animal Logic」にてプロダクションアシスタントとして働く。2007年よりライターとして活動開始。「日経クロステック」にて連載「映画×TECH〜映画とテックの交差点〜」、「Japan In-depth」にて連載「中川真知子のシネマ進行」を持つ。「ギズモードジャパン」「リアルサウンド」などに映画関連記事を寄稿。

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【了】

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