「核心に迫り切らないジレンマ」タナカシカ(映画チャンネル編集部)|映画『事故物件ゾク 恐い間取り』マルチレビュー

公開中の話題作を4人の評者が“忖度なし”で採点する新企画「映画チャンネル」マルチレビュー。今回は、Snow Man・渡辺翔太が初の単独主演を務める映画『事故物件ゾク 怖い間取り』を徹底レビュー。果たしてその評価は? 点数とあわせて、本作の魅力と課題を多角的に掘り下げる。※評価は5点満点とする。※原作のクライマックスに触れています。未見の方はご注意ください。(文・編集部)

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核心に迫り切らないジレンマ

タナカシカ(映画チャンネル編集部)

【採点評価】1点

 2020年公開の前作とは主人公が異なり、未鑑賞でも問題なく楽しめる本作。物件に足を踏み入れ、日常生活の中で少しずつ幽霊の存在があらわになる構成は、ホラー映画初心者にも優しいつくりだ。

 全4つの事故物件を短編的に描き、それぞれに異なる恐怖を体験できる一方、各物件で何が起きたのかが明らかになる前に物語が次へ進んでしまう。丁寧に恐怖の背景が描かれていないぶん、感情移入するのが非常に難しいと感じた。

「何が起こったのか」ということを徹底的に突き詰める“ホラー主人公あるある”とは異なり、細かいことは気にしない主人公は新鮮だ。しかし、クライマックスで主人公が「自分のせいで人を巻き込んだ」と悩む場面では、それまでの細部を追及しない姿勢とのギャップが大きく、人物像にややブレを感じた。

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【了】

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