「土門と高倉の会話がワクワクするようにつくりたい」ドラマ『最後の鑑定人』プロデューサーが制作の裏側を語る。インタビュー
岩井圭也の同名小説が原作のサイエンス×ミステリー作品としたドラマ『最後の鑑定人』(フジテレビ系)。本作でプロデューサーを務める石原未菜さんのインタビューを敢行。凄腕鑑定人の主人公・土門を演じる藤木直人、バディを組む高倉を演じる白石麻衣のキャスティング秘話を中心に、撮影の裏側をお聞きした。(取材・文:あまのさき)
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原作とは異なる土門のキャラクター
―――土門のキャスティングについて、すぐに藤木直人さんを思いつかれたというふうにコメントをされていましたが、実際に土門を演じている藤木さんをご覧になっていかがですか?
「土門に関しては、映像化にあたって原作の岩井先生とも相談をさせていただいたうえで、偏屈さが前面に出るキャラクターにさせていただくということになったんです。藤木さんにオファーをさせていただいたのは、笑顔が爽やかでカッコいい藤木さんが、白衣を着た偏屈な科学者を演じるというのは今までのイメージと違って面白いんじゃないかと思ったから。
もともと理系でいらっしゃることもあって専門用語をすらすらおっしゃったり、全然笑わずに話したりするところは、すごくドラマ版の土門のキャラクターが出ていて、お願いしてよかったなあと思っています。現場の話でいうと、実際に本物の機械を使ってDNAの抽出作業なんかをやっていただいているんですけど、すごく器用でいらっしゃるからすぐできてしまって、監修の先生も『藤木さん、とてもお上手です』とおっしゃられていましたね」
―――原作とは異なるキャラクターの構築は、藤木さんとお話をしながらつくられたのでしょうか?
「偏屈なキャラクターを演じていただきたいというところはベースでありつつ、原作とは少し違って感情を表に出すキャラクターにするという点において、ご本人とも相談をさせていただきました。一点を見つめて目を合わせないとか、ブツブツ喋り出す、ありがとうが言えない…というところはドラマ版の土門のキャラが立っているシーンになったかなと思います。加えて、ケーキを嬉しそうに食べているところなど、いろいろな土門を表現することを楽しんでいただいているんだなという印象です」
「土門と高倉の会話がワクワクするように作りたい」
ドラマならではの面白さ
―――「これはさすがに土門先生でも無理ですかね?」という言葉から、白石麻衣さん演じる高倉に転がされている感じもすごくかわいらしいです。
「原作の土門と高倉は、科学者と助手という関係が最初から出来上がっているんですが、ドラマでは対立しているというか、高倉は土門の態度や考え方に納得していないし、土門も高倉に関心がある風ではない形からスタートしました。そこから事件を重ねて、徐々に高倉も土門のことを理解し、上手くいくようになっていく。事件も気になるけど、まずは土門と高倉の会話がワクワクするようにつくりたいな、と。そういうのはドラマならではの面白さとして表現できたらいいなと思っているポイントです」
―――個人的には高倉が4話で西垣匠さん演じる戸木の罪が明らかになっていくときに向ける眼差しが印象的でした。石原さんから見て、白石さんはどんな俳優さんですか?
「撮影の合間とかも、本当に優しくて明るい方で、白石さんがいることで現場の雰囲気もさらによくなっています。役どころとしても、高倉は土門に比べて人間っぽい人物で、人の心を大切にするキャラクター。いろいろな人に会いに行って、事件を見届けようとしている高倉の真っすぐさを上手に演じていただいているなあと思っています」
―――先日、映画チャンネルで都丸役の中沢元紀さんにも取材をさせていただいたのですが、中沢さんのキャスティング理由についてもお伺いできますでしょうか?
「中沢さんは別の作品(連続テレビ小説『あんぱん』)でも拝見していて、爽やかな笑顔で、いまの若い人のなかでも光っているなという印象を受けて、ぜひご一緒させていただきたいなと思っていました。都丸は事件に一生懸命な刑事なので、この役を中沢さんに演じていただけたら、すごく素直な役が出来上がるんじゃないかと思って、今回オファーさせていただきました」
―――SNSを見ていると、お2人に対する反響も大きいですね。
「作品としては若い方というよりは少し上の世代の方をターゲットにしているので、他のドラマに比べるとSNS世代の視聴はそこまで多くはないと思っていたんですが、藤木さんはもちろんですが、予想以上に白石さんと中沢さんの反響が大きい。コメントもたくさんいただいているので、嬉しいなあと思っています」
「現実を突きつけられることもある」
原作をベースとした苦さも
―――毎話ゲストが出てくるところも本作の魅力の1つだと思います。5話まで放送されたなかで(取材時)、印象に残っているゲストの方はいらっしゃいますか?
「直近で言うと5話に登場してくださった佐野岳さんですね。救いどころもない悪いやつを土門がやっつけるというところに爽快感を持たせたい回だったので、本当に悪く演じてほしいということを監督からお願いして、振り切ってもらいました。観ている視聴者の方がイライラしすぎてチャンネルを変えられないか不安でしたけど、すごく面白く演じていただけたなと思っています。あとは4話の佐藤めぐみさんと西垣匠さん。土門の過去にまつわる重要な回で、すごく泣けるシーンもあったんですが、難しい心情の部分を上手に演じていただけたなと思っています」
―――たしかに、科学の力で追い詰めていく爽快感もある一方で、やるせなさを感じる瞬間もある作品かなと思って拝見しています。
「もちろん科学捜査によって事件が解決されることの爽快感を大事にしたいと思いながらつくっています。ただ、科学ですべてが明らかになるわけではないし、みんなが幸せになるわけじゃないというのが現実だと思うんです。原作にもそういう話があるので、現実を突きつけられることもあるということを表す回があってもいいんじゃないかと思い、原作をベースにつくらせていただいている回もあります。なので、爽快なときもあるし、うまくはいかなかったけれども、科学捜査によってわかったことはこれなんだということもある。全部がうまくいくわけじゃないということまで含めて、それぞれの回によって描けたらいいなと思っています」
【著者プロフィール:あまのさき】
アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
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