トラウマ確定…『鬼滅の刃』史上最も救いのない鬱回は?(2)悲しすぎる…鬼の道へと導いた強い憎しみとは?
世界的ヒットを記録している『鬼滅の刃』には、笑顔や成長の裏に観る者の心を深く抉る“鬱”な瞬間が数多く潜んでいる。それらは物語を重く、しかし確かな深みをもって支えている。今回は、胸が締め付けられる名シーン5つセレクト。『鬼滅の刃』がなぜこれほどまでに心を掴んで離さないのか、その理由に迫る。第2回。※原作のクライマックスに触れています。未見の方はご注意ください。(文・小室新一)
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貧困と差別が生んだ絆と憎しみ
妓夫太郎と堕姫
『鬼滅の刃』では、鬼であってもその多くが切ない過去を背負っている。遊郭編に登場する上弦の陸・堕姫と妓夫太郎もまた、壮絶な生い立ちを持つ兄妹だった。炭治郎たちが初めて討ち取った上弦の鬼であり、その戦いは鬼殺隊にとっても大きな転機となる。
彼らはそれぞれ強力な血鬼術を使いこなし、しかも“2人の首を同時に斬らなければ倒せない”という厄介な特性を持っていた。この一心同体の背景には、人間だった頃の強い絆があった。
妓夫太郎は遊郭の最下層で生まれ、醜い容姿ゆえに差別され、蔑まれて育った。そんな彼の人生を一変させたのが、美しい妹・梅の誕生だった。妓夫太郎は妹を守ることに生きがいを見出し、取り立て屋として荒んだ世界を生き抜く。しかし、その日々は長く続かない。
梅が侍の目を刺すという事件を起こし、その報復として生きたまま火あぶりにされてしまう。瀕死の梅を抱えた妓夫太郎もまた、命を狙われる。絶望の中で「梅を傷つけた者を許せない」という強い憎しみが、二人を鬼の道へと導いた。
妓夫太郎は「何度生まれ変わっても鬼になりたい」と言い切るほど人間への未練を捨てていたが、貧しい環境で妹を育てたことには悔いを残していた。一方、梅は「何度生まれ変わってもお兄ちゃんの妹でいたい」と願い続けた。
そして、炭治郎たちに頸を落とされ、黄泉路を経て地獄へ堕ちるその時も、梅は決して兄の手を離さなかった。
鬼として多くの命を奪った報いは避けられない。だが、それでも二人が報われる世界がどこかにあれば──と願わずにはいられない、胸を締めつけるエピソードだ。
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【了】