藤木直人“土門誠”の冷徹な言葉が突き刺さる…DNA判定が導いた真犯人とは?『最後の鑑定人』第7話考察&感想【ネタバレ】

text by まっつ

藤木直人主演のドラマ『最後の鑑定人』(フジテレビ系)が放送中だ。藤木演じる敏腕鑑定人が、白石麻衣演じるウソを見抜くのが得意な研究員とともに、科学的アプローチを駆使して難事件の真相を暴いていく本格サイエンス×ミステリー。今回は第7話のレビューをお届けする。(文・まっつ)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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科学を歪める検察に土門が立ちはだかる

『最後の鑑定人』第7話 ©フジテレビ
『最後の鑑定人』第7話 ©フジテレビ

 土門誠(藤木直人)は「科学への冒涜だ」と憤る。検察は都合のよい証拠だけを切り取り、横手紘奈(葉月ひとみ)殺害の容疑で元恋人である北尾洋介(濱田龍臣)を起訴へと至ったからだ。科学は真実を暴くということを信じている土門からすれば、科学をいいように利用する検察側のやり方を決して看過することはできなかっただろう。しかし、事実を追求するため息巻いた土門の前に立ちはだかったのもまた科学だった。

 今回の事件ではDNA判定が大きな意味を持っていた。一般的なSTR法では洋介が犯人である証拠は出なかったものの、Y-STR法では一致するというデータが示された。DNA判定は裁判においても重要視される強い証拠のひとつで、他人と偶然一致する可能性は「極めて低い」。素人目に見ていても、DNAは人間固有のもので覆すことは難しいのではと思ってしまう。

 そんな中、土門は科学を持ってして二の矢三の矢を放っていく。そのひとつが歩容解析であり、歩き方から犯人と洋介が同一人物ではないことを明らかにする。従来の刑事ドラマが扱ってきた、指紋や血痕、そしてDNAといった定番の証拠から一歩先へ進んでいる。科学は人間が生み出す嘘も見逃さないことを示しているようで、少しゾッとしてしまうような感情も浮かび上がる。

加害者家族が背負う苦悩

『最後の鑑定人』第7話 ©フジテレビ
『最後の鑑定人』第7話 ©フジテレビ

 第7話で並行して描かれたのが加害者家族の感情だ。洋介が容疑者として任意同行されたことで、家族までもが世間からバッシングを受け厳しい風当たりにさらされるように。一方的に命を奪われた被害者側のストーリーが描かれなかったことはやや気にかかったが、加害者家族の涙や苦悩が見られたのにも理由があった。

 DNAの解析方法でSTR法が極めて確度がない一方、Y-STR法は本人でなくとも一致してしまうことがあるという。それが同性の家族である場合だ。土門は法廷で事実をつまびらかとし、真犯人は洋介ではなく、弟の憲幸(今井柊斗)だったことがわかる。洋介が警察に連れて行かれた直後、いじめられて複雑な表情を浮かべていたのも、風呂場で自殺未遂をしたことも、心の憶測に罪の意識があったからこそ生まれた動きだったのだろう。

 後から考えれば、人間の心理はいくらでも想像し、つじつまを合わせることができる。だが、人はタイムリープはできないし、心の中をのぞくこともできない。だから、客観的な事実を示せる科学が大きな意味を持つ。今回の新事実は科学を信じ、証拠をひとつひとつ丁寧に積み重ねることのできる土門でなければ、たどり着くことはできなかっただろう。

「家族は他人」土門の冷徹な一言が突き刺さる

『最後の鑑定人』第7話 ©フジテレビ
『最後の鑑定人』第7話 ©フジテレビ

 結局は北尾一家は本当の意味で加害者家族となったわけで、疑いだけで大変な目に遭っていたのだから、これから先は正直想像もしたくないような苛烈な未来が待っているかもしれない。洋介のような家族思いで、弟の罪を被ってしまおうという人間や、子供を最後まで信じられる母親がいたとしても、簡単に乗り越えられると言いきることはできない。

 だからこそ、むしろ土門のドライな言葉が刺さる。「家族なんてしょせんは他人の集まりだ」。血を分けてはいるかもしれないが、もちろん同じ人間ではないし、完璧にわかり合うことはできない。犯罪者となった憲幸を家族3人が切り捨ててはいけないが、ある種違う人間と割り切ってしまうことが、今後の生きやすさにもつながるのではないかとも思った。第7話は科学的なアプローチが光りながら、家族関係についても改めて考えさせられるような深みを感じさせる。

 ビター結末で締めくくる中、第8話でスポットライトを浴びるのは高倉柊子(白石麻衣)となるのだろうか。今回の第7話ではサプライズでの誕生日パーティーを除き、若干存在感が希薄だったため、高倉なりの価値と見方で新たに舞い込む事件を解決へ導いてほしいところだ。

【著者プロフィール:まっつ】

1993年、東京生まれ東京育ち。本職はスポーツウェブメディアの編集者だが、エンタメ・お笑いライターとして修行中。1週間に20本以上のラジオを聴く、生粋の深夜ラジオ好き。今一番聴くべきラジオは『霜降り明星のオールナイトニッポン』。好きなドラマは『アンナチュラル』、『いちばんすきな花』、『アンメット』。

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