中古市場で数万円…お蔵入り&プレミア化した幻の日本映画5選。恐怖と伝説…入手&視聴困難な邦画をセレクト

text by 阿部早苗

ある作品はなにをもって「カルト映画」と呼ばれるようになるのだろうか?映画がカルト化する一つの瞬間は「見たくても見れない」希少性にマニアたちの渇きが最高潮に達した時かもしれない。配信全盛時代にあるいまこそ、中古市場でソフトの価格が高騰し、入手困難となった隠されしホラー・アングラ映画の世界へ飛び込もう。
(文・阿部早苗)

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中古市場で1万超えのコメディ・ホラー

『居酒屋ゆうれい』(1994)

山口智子
山口智子【Getty Images】

監督:渡邊孝好
脚本:田中陽造
出演:萩原健一、室井滋、山口智子

【作品内容】
 居酒屋「かづさ屋」の主人・壮太郎(萩原健一)は亡き妻しず子(室井滋)に再婚しないと誓ったが、見合い相手の里子(山口智子)と結婚してしまう。約束を破られたしず子は幽霊となって現れるが――。

【注目ポイント】
 近年、廃盤となったVHSやDVDの中古価格が高騰する現象が映画ファンの間で話題になっている。その代表的な一本が、1994年公開の人情コメディ『居酒屋ゆうれい』だ。

 渡邊孝好監督がメガホンをとり、脚本は名手・田中陽造。原作は山本昌代による小説で、主演は萩原健一。さらに山口智子、室井滋、橋爪功、余貴美子、西島秀俊といった豪華な顔ぶれが揃った。

 ストーリーは、亡き妻に「再婚はしない」と誓った居酒屋の主人が、後妻を迎えたことで幽霊となった前妻に振り回される笑いと涙の人情劇だ。

 物語の中でも室井滋演じる幽霊となって現れる前妻の存在は、作品の大きな魅力となっている。さらに居酒屋という市井の場を舞台に、人々の欲望や嫉妬を軽妙な笑いに昇華しながらも、最後には家族や仲間の絆が浮かび上がる。1990年代らしい軽やかなテンポが心地よく、観終えたあとにじんわりとした余韻を残す作品だ。

 しかし現在、この映画を観るのは簡単ではない。DVDやVHSはすでに絶版となっており、中古市場に頼るしかない。DVDの価格もほとんどが1万円を超えている。配信サービスやテレビでの再放送もほとんどなく、視聴できる機会は極めて限られている。

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