映画で”死”を学ぶ…人生最後の日々を描く傑作映画(2)。日本映画が面白い! 認知症の母を描く人情喜劇
text by 編集部
いずれ誰しもに訪れる、老い…。今回は、高齢者やその家族の生活や思考回路に焦点を当てた、認知症・老いがテーマの映画5本をセレクト。アンソニー・ホプキンスが徐々に悪化していく認知症患者を熱演した傑作など、洋画、邦画、ドキュメンタリー作品までを幅広くご紹介する。
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認知症の母と息子の交流を描いたハートウォーミングな人情喜劇
『ペコロスの母に会いに行く』(2013)
上映時間:113分
製作国:日本
監督:森崎東
脚本:阿久根知昭
キャスト:岩松了、赤木春恵、原田貴和子、竹中直人、加瀬亮、温水洋一
【作品内容】
漫画や音楽活動に没頭し仕事に身が入らないバツイチのサラリーマン・ゆういち。彼には89歳になる母・みつえがいたが、忘れ物が多くなったり近所を徘徊したりと認知症の症状が進むようになり、介護施設に預けることになる。
みつえはそこで共同生活を送りながら、自らの少女時代や結婚生活など、過去の記憶をよみがえらせていく。
【注目ポイント】
本作は、岡野雄一の同名漫画を実写化した作品。監督は人情喜劇の名匠・森﨑東が務め、ゆういちを岩松了、みつえを赤木春恵が演じる。なお、赤木は88歳にして本作が映画初主演となり、「世界最高齢での映画初主演女優」としてギネス世界記録に認定された。
『男はつらいよ フーテンの寅』など、庶民の姿を悲哀とユーモアを交えて描いてきた森﨑。本作でも森﨑のタッチは健在で、ともすればシリアスになりがちな介護問題を実にユーモラスに描いている。
出色は、赤木をはじめとする年季の入った俳優陣の自然な演技だろう。とりわけ、佐々木すみ江や正司照枝ら、老人ホームの入居者たちの飄々とした演技は必見である。
なお、本作は全編長崎でロケが行われているほか、同県出身者も多く出演している。同県のご当地映画としても楽しめる一本である。
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