タランティーノ監督が選ぶ「史上最高の映画」とは? 稀代のヒットメーカーへのリスペクトを語る。最新作は今秋撮影予定
『パルプ・フィクション』、『キル・ビル』などの名作を生み出し続け、多くの映画ファンや、製作者にインスピレーションを与え続けるクエンティン・タランティーノ監督。彼は制作中の10作目を持って映画監督を引退すると発表し、現在話題となっている。そんな彼が選んだ「史上最高の映画」とは?
偉大な“フィルム”ではないかもしれない
でも史上最高の“映画”
クエンティン・タランティーノ監督は、自身の意見を率直に述べる。その深い映画知識から、映画史の中で重要な人物となっていることは有名だ。彼の映画への大きな愛情は、映画関係者にはよく知られていることだ。
毎週、最新のエンターテインメントニュースに関して議論を行う米ポッドキャスト「ReelBlend(原題)」のエピソード内で、クエンティン・タランティーノ監督が、史上最高の映画作品が、スティーブン・スピルバーグの映画であると話したようだ。今回はその内容を米Movie Webを元に紹介していく。
彼が「史上最高の映画」と評した作品は、スピルバーグ『ジョーズ』。1975年6月20日に公開されたスリラー映画『ジョーズ』と言えば、スティーブン・スピルバーグ監督が、そのキャリアをスタートさせた作品だ。アミティ島の住民を恐怖に陥れる獰猛なサメを描くこの作品は、アカデミー賞の4部門にノミネートされ、3部門で受賞を果たし、批評的にも商業的にも成功を収めた作品だ。
ピーター・ベンチリーの小説を基にした本作は、当時900万ドル(現在の日本円で約12億6000千万)の予算で、4億7650万ドル(現在の日本円で約649億円)の興行収入を上げた。これは本作を1970年代で最も収益性の高い映画の1つにし、史上最も数字的にも成功した映画の1つとなった。
映画『ジョーズ』はその後、『ジョーズ2』(1978)や、『ジョーズ3』(1983)などの一連の続編作品が公開されたが、いずれもスピルバーグ監督の名作品と比べると、そこまで大きな成功を収めるには至らなかった。しかしながら、これらの続編作品も、かなりの額の興行収入を得たのは事実だ。
タランティーノは「映画『ジョーズ』は、史上最高の映画だと思う。もしかしたら、最も偉大な“フィルム”ではないかもしれない。でも史上最高の“映画”なんだ!」、「映画作品として『ジョーズ』より優れた作品を製作することは無理なんだ。『ジョーズ』より良いものはないんだ。史上最高の映画だよ」と語ったようだ。
この内容を聞く限り、タランティーノ監督は、スピルバーグ監督の映画に対し、多大な賞賛と尊敬の念を抱いているのがわかる。しかし、タランティーノ監督の「フィルム」と、「映画」を分けて発言しているのは、一体どういうことなのだろうか。
ほとんどの人にとって、この2つの言葉は同義語だろう。しかしタランティーノ監督のような映画愛好家は、この2つを別物だと考えているようだ。彼は、この区別を使用しながら、映画『ジョーズ』について「ReelBlend(原題)」で下記のように語った。
「私が言いたいのは、スピルバーグや、彼の仲間の多くは、劇場で、その種の映画を見て育ったということだ。ヘンリー・レヴィン監督の『地底探検』とかね。彼はこういった作品を観るために走って劇場へ向かうことだろう。リチャード・フライシャー監督の『ミクロの決死圏』とか、ゴードン・ダグラス監督『放射能X』に対してもそう。これらの作品のほとんどは、それほど上手く製作されていない。しかし、このような作品は、まさにスピルバーグが好きな映画なんだ。彼が製作を行うために地球にやってきたような映画なんだ。そして、彼はこのような作品を寸分の狂いもなく、可能な限り効果的に製作するつもりなんだ」
『レザボア・ドッグス』、『パルプ・フィクション』、『ジャッキー・ブラウン』『キル・ビル』、『イングロリアス・バスターズ』、『ジャンゴ 繋がれざる者』といった名作を生み出したタランティーノ監督は、常に同時代の人々に感銘を与えると同時に、新しい世代の映画監督に影響を及ぼしている。
合計10作品の製作で引退を宣言しているタランティーノ監督。その製作映画の数々は、世界中の人々に影響を与え、彼が無名映画や、映画監督に言及するだけで、多くの映画ファンがその映画をチェックする程、彼の動向には多大な視線が向けられている。
このことを考慮すると、彼の作品は、ポップカルチャーの時代精神の一部であるだけでなく、これからもずっと研究され続け、次世代の映画監督や、映画ファンに人生のインスピレーションを与えていくだろう。