2023年3月15日、6年ぶりとなる最新作『首』の記者会見を行った北野武。配給元とのゴタゴタもあり、当初はお蔵入りもささやかれた同作だが、とりあえずは一安心といったところだろう。本記事では、今秋の上映に先立ち、北野武作品の魅力を存分に紹介する。

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ラストのセリフが心に沁みる…。
北野流の青春残酷物語

『キッズ・リターン』（1996）

出典：Amazon

【作品内容】

周りが受験モードなのに、問題ばかり起こしている18歳のマサルとシンジ。ある日、カツアゲした高校生の友人にノックアウトされたマサルは、悔しさをバネに、ボクシングジムに通いはじめる。シンジも入門し2人練習に没頭するが、ボクサーとして頭角を表したのはシンジの方だった。ボクシングジムを辞めたマサルは、以前会ったヤクザの親分を頼るが－。

【注目ポイント】

本作は、北野が自身の経験を織り交ぜながら描いた青春群像劇。マサル役を金子賢が、シンジ役を新人だった安藤政信が演じている。

甘酸っぱい恋愛模様に、仲間との熱い友情－。普通の青春映画であれば、そんな学生時代特有のキラキラした世界を描くのが定石だろう。しかし、北野が描出するのは、シビアな現実に直面し行き場を失った“敗者”としての若者の姿。その描写は、画面から横溢する「キタノブルー」の色彩も相まって、なんともほろ苦い印象を与える。

また、本作で描かれるのは、マサルとシンジの人生だけではない。就職先にことごとく失敗する内気な青年・ヒロシ（作中で最も残酷な最期を迎える）や不真面目な先輩ボクサー・ハヤシなど、どのキャラクターも丹念に描かれており、北野の厳しくも温かい愛が感じられる。

ちなみに、本作といえば、ラストシーンを挙げる人が多いだろう。挫折し、行き場を失ったマサルとシンジが、学生時代と同じように、二人乗りをしながら交わす次のセリフを交わすシーンだ。

「マーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかな？」
「バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ」

このセリフは、2人の単なる強がりなのか、それとも再起への違いなのかー。その答えは、各々で見つけ出してほしい。

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