ストーリーの読解の鍵は? 映画『カード・カウンター』は『タクシードライバー』好き必見の異色スリラー。忖度なしガチレビュー
text by 島 晃一
マーティン・スコセッシが製作総指揮を務め、『タクシードライバー』の脚本家ポール・シュレイダーがメガホンをとった、“復讐と贖罪”のスリラー映画『カード・カウンター』が公開中だ。今回は『タクシードライバー』との類似性も見出せる本作の魅力をひも解くレビューをお届けする。(文・島 晃一)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】
タイトルの由来になったカードカウンティングとは?
マーティン・スコセッシが監督した『タクシードライバー』(1976年)や『レイジング・ブル』(1980年)の脚本を手がけただけでなく、監督としても数々の映画を撮ってきたポール・シュレイダー。A24配給の『魂のゆくえ』(2017年)がアカデミー賞脚本賞にノミネートされるなど、近年の作品でも高い評価を得てきた。
『魂のゆくえ』から4年後、シュレイダーが監督と脚本を務めたのがこの『カード・カウンター』だ。製作総指揮はなんとスコセッシが担当。前作『魂のゆくえ』は、インディワイヤー誌、カイエ・デュ・シネマ誌などでベストに選出されたが、本作も各国の映画祭で上映され好評を博した。
タイトルの由来になったカードカウンティングとは、ブラックジャックやポーカーで、既に場に出たカードを記憶する行為を指す。これを用いて効率よく賭けると、カジノ側に大きな損害を与えかねないため、禁止行為になっている。
映画は、「俺がムショ暮らしに向いているとは意外だった」という主人公のモノローグと共に、ブラックジャックをスローモーションで映すカットから始まる。刑務所での生活が語られた後、再びカジノでのブラックジャックの場面に戻り、カウンティングの説明をする。