「そんなわけあるか!」ツッコミどころ満載のSF日本映画(1)。真剣に作ってない!? 陳腐な設定満載の珍作
洋画に比べるとまだまだ充実度が低い印象のある日本のSF映画だが、努力のあとが見られる作品はある。しかし、あまりにもスケールが大きすぎたり設定が甘いと、観る側を困惑させてしまうのがSFの難しい点だ。今回は、そんな国内のSF映画のなかから、特にツッコミどころの多い作品を5本セレクトした。(文・寺島武志)
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スマホアプリで幕末にタイムスリップ!?
謎のストーリーで観客を翻弄
『幕末高校生』(2014)
上映時間:108分
監督:李闘士男
脚本:橋部敦子
キャスト:玉木宏、石原さとみ、柄本時生、川口春奈、千葉雄大、谷村美月、吉田羊、柄本明、山崎銀之丞、伊武雅刀、石橋蓮司、佐藤浩市
【作品内容】
高校教師の川辺未香子(石原さとみ)は、懸命に日本史の授業に勤めるが、生徒たちはまともに授業を受けてくれない。放課後、未香子は生徒の沼田慎太郎(千葉雄大)と母親を交えた三者面談の場で、獣医になりたい彼の夢を無視し、母親の希望である医学部のある大学を勧めていた。
そんな中、日本史の試験中に、高瀬雅也(柄本時生)がカンニングしようとしてスマホのアプリ「体感ヒストリー」をインストールする。試験後、未香子が車を運転していると教え子3人(雅也と森野恵理(川口春奈)、慎太郎)が言い争いをして、未香子の車の前に飛び出してくる。その時、雅也の「体感ヒストリー」のアプリが光り出す。タップすると、光に包まれた4人は江戸時代末期へとタイムスリップしてしまうのだった…。
【注目ポイント】
本作は、スマホアプリ「体感ヒストリー」をきっかけに、先生と生徒3人が江戸時代末期へとタイムスリップ。高校教師と生徒たちが、勝海舟や西郷隆盛などと対面しつつ、現代に戻ろうと奔走する様子を描くSF時代劇だ。
数々の大ヒットバラエティー番組を手掛けた李闘士男の監督作とあって、コメディー要素がふんだんに盛り込まれている。
「若い世代をターゲットにした時代劇」として製作されたものの、スマホアプリでタイムスリップするという陳腐な設定、タイムスリップした先に車が後から付いてくるという謎の演出で観客を翻弄する。
幕府軍と新政府軍が覇権を競っていた幕末という時代をあまりにも軽く描写し、勝海舟を優柔不断な男としたキャラクター設定の残念さも相まって、脚本の稚拙さが見受けられる。
また、佐藤浩市は西郷隆盛を熱演しているものの、ビジュアルのイメージがあまりにも違い過ぎるため、物語に入っていけない。きっと作り手には、歴史劇を真剣に作ろうという意識は微塵もないのだろう。
しかし、歴史などというものは、その時代の勝者によって、いかようにも書き換えられるものでもある。教科書に書かれていることが100%事実ということなどあり得ない。実際、西郷隆盛には肖像写真が残されておらず、明治に建てられた上野の銅像も西郷本人とは「まったく似ていない」という。
ヒトラー暗殺に成功するクエンティン・タランティーノ『イングロリアス・バスターズ』(2009)などに通じる、偽史ものとして見れば、型破りな魅力が少しは理解できるかもしれない。
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