実話が怖すぎる! 実在の事件がモデルのホラー映画(5)。戦慄のカルト教団…後味悪すぎ、最悪の虐殺事件
ホラー映画やSF映画を観ていて、「どうせフィクションだから…」と冷めてしまう瞬間はないだろうか。しかし冒頭で「この作品は事実を基にしています」とアナウンスされるだけで、妙な説得力が加わって好奇心をそそられることがある。今回は、実際に海外でも話題となったポルターガイスト事件や集団自殺事件など、実話を基にした作品を5本ご紹介する。
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カルト宗教によるアメリカ史上最大規模の集団自殺事件がモデル
『サクラメント 死の楽園』(2015年)
上映時間:100 分
原題:The Sacrament
製作国:アメリカ
監督:タイ・ウェスト
脚本:タイ・ウェスト
キャスト:ジョー・スワンバーグ、AJ・ボーウェン、エイミー・サイメッツ、ケイト・リン・シャイル、ジーン・ジョーンズ
【あらすじ】
主人公のパトリックのもとに、連絡を長らく取っていなかった薬物中毒の妹から、「自分は今とある共同体にいる」という手紙が届く。その内容を不審に思ったパトリックは、過激な取材を得意とするVICE社の記者2人とともに、妹のいる「エデン・パリッシュ」と呼ばれるカルト教団への潜入取材を試みる。
一行が妹のもとへと到着すると、共同体の人々は幸福そうに見えた。しかし取材を進めるうちに、住民たちは徐々に不穏な様子を見せ始め…。
【注目ポイント】
本作の題材となっているのは、アメリカのインディアナ州で1978年に起きた「人民寺院」というカルト宗教団体での集団自殺事件だ。1950年代に教祖のジム・ジョーンズが創設した人民寺院は、1970年代に入ると金銭的な詐欺行為や信者への虐待でメディアから批判されるようになる。
その後、団体はアメリカから南米の国・ガイアナへと拠点を移し、「ジョーンズタウン」と呼ばれる農業を行う施設を設立。ここでは畑での長時間労働や、パスポートの没収、手紙の検閲や、規則に違反した者への懲罰などが行われていたという。
本作は、「人民寺院」をモデルにしたカルト教団にハマった妹を助け出すため、ジャーナリストの男が教団内部に入り込んでいくプロセスを丹念に記録している。全編にわたり、主人公の主観映像で進行していく「POV手法」が駆使されており、視聴者も得体の知れない集団に放り込まれたような臨場感を味わえる。
実際の事件では、教祖・ジョーンは信者たちに「革命的行為」と称した自殺を命じ、900人以上が青酸カリや鎮静剤の入ったドリンクを飲んで死亡。むごいことに、被害者の大半は自主的ではなく、銃などで脅されて嫌々薬物を飲まされたとのことだ。
実話をモチーフにした本作。過激な表現は控えめであり、ホラー映画としては物足りなさもある。しかし、実在した事件の顛末を知って鑑賞することで、ふとした細部に闇を感じ、怖さが増す。
日本のオウム真理教事件を想起させる、カルト教団の暴走。モデルとなった事件を知れば知るほど、後味の悪さを残す作品だ。
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