海外レビューの評価は…? 映画『オッペンハイマー』はクリストファー・ノーランの最高傑作? 興奮が伝わる現地の声をレポート
ノーラン監督の創造力と、出演する豪華キャスト陣により、映画『オッペンハイマー』は、2023年公開作品の中で、最も注目すべき作品と言える。米国では、7月21日の正式な公開に先立ち、映画批評家達の本作の批評が相次いでいる。今回は、カナダニュースサイトScreen Ranより、その内容をお届けする。
本作はノーラン監督の最高傑作!
歴史に名を残す作品になる可能性が高い
クリストファー・ノーラン監督の最新作『オッペンハイマー』は米国では7月21日に公開された。映画批評家達の意見は、「本作は主役を演じた俳優キリアン・マーフィーの思慮深い演技を中心とした緊張感と爽快感に溢れる政治スリラーで、ノーラン監督の最高傑作として、歴史に名を残す作品になる可能性が高い」という意見で一致しているようだ。
それでは早速その意見を見ていこう。以下が、本作を鑑賞した映画批評家達のコメントの一部となっている。
【Graeme Guttman(Screen Rant)】
ノーラン監督は、人間的な要素よりも、技術的な要素に重点を置いていることで、不毛な映画製作者と批判する人もいる。しかし本作は、人間的要素と技術的要素の両方を用いている。
ノーラン監督は、白熱した技術的な会話や、破滅的な家庭内のいざこざを、スリリングなアクションシーンのように撮影し、言葉のひとつひとつ、顔の動きひとつひとつに迫りくる破滅の予感を吹き込んでいる。極めて個人的でありながら、記念碑的なスケールを持った映画『オッペンハイマー』は、ノーラン監督の最大の功績と言えるかもしれない。
【Ross Bonaime(Collider)】
ノーラン監督と何年も仕事を共にしてきた、俳優キリアン・マーフィーのオッペンハイマー役は、ノーラン監督のカメラが捉えた、最高の演技のひとつとして語り継がれることだろう。
【Peter Bradshaw(The Guardian)】
これこそビッグバンであり、ノーラン監督ほどそれを大きく、圧倒的な作品にできた人物はいないだろう。ノーランはこれを単なるアクション演出にすることなくやってのけた。
しかしこの映画は、その大胆さと野心ゆえに、自らの鈍感さという問題を解決できていない。この映画は、かつて日本が経験した出来事を観客に見せるが、広島や長崎の人々を犠牲にしている。その代わり、天才的な人物と言われるオッペンハイマーの苦悩でドラマの長い時間を埋めているのだ。
【Pete Hammond(Deadline)】
3時間という長さには多くの物語が詰まっているが、ノーラン監督はそれを見事に凝縮し、最高のスリラー映画のテンポでこの映画を進めている。
【Johnny Oleksinski(New York Post)】
道徳的に複雑で情報量が多く、手に汗握るドラマであると同時に、心を揺さぶる映像の饗宴でもある、原爆の父、J・ロバート・オッペンハイマーの伝記映画は、背後に、映画『メメント』や、『インセプション』、『ダークナイト』3部作を手掛けた聡明な頭脳を持つノーラン監督にしか製作不可能だろう。
【David Rooney(The Hollywood Reporter)】
クリストファー・ノーラン監督の映画『オッペンハイマー』は、第二次世界大戦を終結させた原爆製造のマンハッタン計画を率いた男についての、頭脳明晰で骨太なスリラーである。爆発的というよりはスローバーンな作品だ。ノーラン監督は、現代において最も広く知られた名監督の一人だ。
彼の2作目の映画『メメント』で、世界的な称賛と注目を浴びて以来、ノーラン監督は多かれ少なかれ、頭脳的で説得力のある映画製作の代名詞的存在となっている。彼の映画はたいてい2つのどちらかに分かれる傾向がある。
『インセプション』、『テネット』、『インターステラー』のようなハイ・コンセプトの大作か、『メメント』、『インソムニア』、『プレステージ』のようなやや小規模な心理映画である。映画『オッペンハイマー』は、その両方の領域を兼ね備えた映画なのかもしれない。
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