「新しい方法を見つけたかった」映画『6月0日 アイヒマンが処刑された日』ジェイク・パルトロウ監督、単独インタビュー
最重要ナチス戦犯のアドルフ・アイヒマン処刑までの最期の日々を描いた映画『6月0日 アイヒマンが処刑された日』が9月8日(金)より公開される。今回は女優のグウィネス・パルトロウの弟でもある、ジェイク・パルトロウ監督のインタビューをお届け。主人公のモデルとなった人物との出会いなど、たっぷりお話を伺った。(取材・文:寺島武志)
「歴史は、誰が証言するか、誰の視点で語るかによって変わる」
主人公のモデルとなった人物との出会いで生まれた物語
――イスラエルで取材を続ける中、主人公・ダヴィッドのモデルになった人物にインタビューしたのが本作の物語を着想するきっかけになったとのことですね。その人物とは、どのような出会いだったのでしょうか。また、どのような話し合いがなされ、 その方に対して、どんな印象を受けましたか?
「リサーチのために、イスラエルに行った時に、アソシエイトプロデューサーの方に、『この事件に関与した存命の方に会いたいので探してください』とお願いしたのですが、そこで、主人公のモデルとなった男性と巡り合うことになりました。
その男性は『少年時代に焼却炉作りに携わった』と主張していたのですが、当時工場にいた関係者は、彼の証言を否定。そうしたゴタゴタが記事になったタイミングでした。その記事を読んだアソシエイトプロデューサーが男性にコンタクトをとると、快く快諾いただき、お話を伺うことができたのです。
彼自身は一貫して『自分は関わったんだ』と主張しているわけですが、一方で『少年なんか雇うわけない』と主張する方もいらっしゃる。歴史というものは、誰が証言するか、誰の視点で語るかによって変わる。そういう部分に興味を惹かれ、彼の話を元にストーリーを構築することにしました。元々は別の物語を構想していたのですが、男性の話を聞いたことで、この映画のあるべき形が見えたのです」
――ダヴィッドのモデルになった人物はまだご存命なんですね。
「はい、存命です。お会いしたのが70代前半だったので、現在は80歳に近い年齢になっていると思います」
――モデルになったダヴィッドさんは本作をご覧になったのでしょうか?
「観てもらうための機会は作ったのですが、彼が本作を観たかどうかわからないんです。男性はヘブライ語を話す方なのですが、私はヘブライ語が堪能ではなく、間に別の人を挟んでやり取りをしていました。
男性とはインタビューをさせていただく際、すごく温かい、良い関係を築くことができたのですが、直接やり取りができたわけではありませんでした」