邦画史上最怖のサイコパスは? 人の怖さを描く傑作日本映画(1)。大女優がやばい! ぶっ飛び感が凄すぎる
連日報道される一線を超えてしまった人たちのニュース。金銭トラブルや殺人事件など、多くの人はそうした出来事とは無縁な生活を送っているのではないだろうか。しかし関わってはいけない人間は、確実に存在する。今回は、身近な恐怖が味わえる、人間の怖さを描いた日本の“ヒトコワ映画”を5本セレクトして紹介する。(文・市川ノン)
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心がない人間のヤバさを不気味に演出
大竹しのぶの圧倒的な“ぶっ飛び”感が凄すぎる
『黒い家』(1999)
原作:貴志祐介
監督:森田芳光
脚本:大森寿美男
出演:内野聖陽、大竹しのぶ、西村雅彦
【作品内容】
保険会社職員の若槻慎二(内野聖陽)は、保険加入者である菰田重徳(西村雅彦)から自宅に呼び出される。そこで重徳の妻・菰田幸子(大竹しのぶ)の連れ子の首吊り現場を発見してしまう。
その後、他殺を疑う会社(若槻)に対し、菰田夫婦はしきりに息子の保険金を催促する。怪しんでいる若槻に追い討ちをかけるように、重徳も不慮の事故として両肘から先を切断。
そして、保険金をねだる幸子。以後、菰田夫妻の異常性に若槻が巻き込まれていく。
貴志祐介による同名小説を森田芳光監督が映画化。
【注目ポイント】
本作のキャッチコピーは「この人間には心がない」。作中の菰田夫妻、特に大竹しのぶ演じる幸子の常人ならざる様子を見れば、言い得て妙で、彼らを表す言葉は他にない。
落ち着きがない子どものように話す重徳、どこか夢うつつで何を考えているかわからない幸子、物語序盤ではなんとも言えないふたりの不気味さが際立つのだ。さらに、画面が緑がかったり、異音が挿入されるなど何層にもわたる不穏な演出は、見る者の恐怖心を巧妙に煽る。
物語が進むと、幸子の残虐性があらわになる。若槻の対応に逆上した幸子は、若槻の恋人である恵を自宅に拉致監禁するのだ。結果的に、若槻は恵を救出するのだが、その猟奇的でおぞましい暴行の跡は思わず目を背けたくなる。
さらに終盤、幸子は若槻に襲い掛かり、殺そうとする。その死闘の際に彼女が放つ言葉が衝撃的だ。
「私も切られたのよ。寝てる時に親に手首を。保険金もらうために。同じことをしてなにがいけないの? ねえ、なにがいけないの?」
彼女の問いかけに適切な反論ができる者はいるだろうか。親が子供に与える影響は計り知れず、決して彼女の不幸な生い立ちを抜きにして「異常だ」と切り捨てることはできない。同じ生い立ちなら、誰もが幸子のような心理状態に陥ってしまうだろう。異常の要因は、日常の中に隠されているのだ。
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