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「主人の現場には映画の神様がいる」映画『こん、こん。』女優・遠藤久美子、インタビュー。スクリーンで魅せる唯一無二の存在感

text by 福田桃奈

オール長崎ロケで送る、対極的な二人の切ないラブストーリを描いた横尾初喜監督最新作『こん、こん。』。今回は、同作にヒロインの母親役で出演している女優の遠藤久美子さんにインタビューを敢行。私生活のパートナーでもある監督とのエピソードや長崎での思わぬ出会いなど、たっぷりとお話しを伺った。(取材・文:福田桃奈)

「思わず『ありがとう』というセリフが出た」
お芝居に反映された長崎での体験

写真宮城夏子

―――試写で拝見させていただいたのですが、遠藤さん演じるヒロイン・七瀬宇海のお母さんがとにかく優しさに溢れていて、観ていて癒されましたし、主人公を救う存在になっていると思いました。レコーダーを聴くシーンは心情的にも演じるのが大変だったと思うのですが、いかがでしたか?

「脚本を読んだ時は、私にも子供がいるので結構苦しかったんです。塩田みうさん演じる娘の宇海に精一杯愛情を注いだつもりでも、心に穴を空けてしまうようなことをしたんじゃないかとか、色々考えてしまって。

レコーダーを聴くシーンは、撮影するまでどうなるのか自分でも分からなかったんですけど、遠藤健慎さん演じた堀内賢星くんがブワーと泣いたのを見て、『こんなに想われていた宇海は幸せだったんじゃないか?』と思った瞬間、思わず『ありがとう』というセリフが出たんです。元々脚本には無かったんですけど、監督がOKしてくださいました」

―――まさに『ありがとう』というセリフで、主人公は救われたと思っていたので、まさか、アドリブだったとは驚きです。撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

「監督が主人なので、撮影期間中は夏休みがてら、子供たちを連れて本作のロケ地である長崎に行くことになったんです。撮影は2週間くらい、私の出番は1日のみだったのですが、コロナの影響で撮影が中断したこともあり、気付いたら2ヶ月くらい滞在していました(笑)。

滞在する中で感じたのは、長崎の方の温かさです。ある時、息子二人を連れて買い物に行った際、駅のエレベーターが故障していたのですが、息子たちはベビーカーで眠ってしまっていて。二人を抱えて階段を登らないといけないと思ったら、それに気付いた他の乗客の方々が、息子二人をベビーカーに乗せたまま、起こさないようにそーっと運んでくださったんです」

―――素敵なお話ですね。

「他にも、滞在期間中はマンションの一室をお借りしていたのですが、大家さんが息子たちのためにお祭りで買ってきたりんご飴などを沢山もってきてくださったり、花火大会にも『一緒に見に行かん?』と連れて行ってくださったり…。

滞在中に上の子が手足口病になった時も、どこの病院に行っていいのか分からず困っていた時に、マンションの大家さんに相談したところ、『友達おるで』とお医者さんを紹介してくださいました。小児科がお休みの中わざわざ診てくださって。

さらに診察が終わった頃に大家さんが車で迎えに来てくださるなど、滞在中、長崎の方の優しさが私の中にいっぱい溜め込まれました。先ほど申し上げた『ありがとう』というセリフには、長崎で出会った方々への感謝の気持ちも込められているんです」

―――長崎の人々との交流が演技に深い影響を与えたのですね。今回、遠藤さんも長崎弁を話されています。

「前作『こはく』(2019)の時は、方言のテープをいただいたのですが、今回は主人から『もう大丈夫だろう』ともらえなかったんです。方言だと現場でも自由にアドリブのセリフを言うというわけにもいかず、最初は固まっちゃって(笑)。

元夫役の栄信さんは佐世保の方なのですが、撮影前は普通に標準語で喋っていたのに、カメラが回った瞬間、流暢な長崎弁を披露されて(笑)。だから凄い汗かいてきちゃって…」

―――とても自然だったので、全く違和感なく遠藤さんのセリフを聞いていました。

「地元の方が聞いたら、『頑張っとるねー!』って言ってくださると思います(笑)」

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