今なら確実に炎上…! 当時は大絶賛・実は問題だらけの名作映画(3)黒人奴隷を美化しすぎ…差別描写が酷い名画
近年、映画業界では差別や偏見を無くす動きが加速。それ自体は無条件に喜ばしい事態であるが、昨今はポリコレを意識しすぎて、逆に視聴者の共感を生むことが難しくなっている傾向もある。しかし、以前はそんなことを気にせず製作された作品が多く存在した。今回は、そんな現代では批判を喰らいそうな作品を5本紹介する。(文・高梨猛)
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公開当時は空前の大ヒットとなった歴史的名画
差別描写で配信停止
『風と共に去りぬ』(1939)
上映時間:222分
原題:Gone with the Wind
製作国:アメリカ
監督:ヴィクター・フレミング
脚本:ドニー・ハワード
原作:マーガレット・ミッチェル
出演者:ヴィヴィアン・リー、クラーク・ゲーブル
【作品内容】
マーガレット・ミッチェルのベストセラー小説を巨額の予算をかけてカラー映画化した壮大な歴史ドラマ。南北戦争時代のアメリカ・ジョージア州を舞台に、激しい気性と美貌を持つ令嬢スカーレット・オハラと、彼女を取り巻く男性たちが愛と戦争に翻弄されながらも生き抜いていく姿を描く。
アカデミー賞10部門受賞。世界的に大ヒットを果たし、貨幣価値を調整して計算すると、現在でも興行収入ランキングで上位に入るといわれている。
【注目ポイント】
1939年に公開され、空前の大ヒット。いまも歴史的名作として映画史には必ずその名前が出てくる『風と共に去りぬ』。まだ奴隷制度の残っていた南北戦争時代を舞台としているため、近年になってその描写が問題視されることが増えた。
本作は徹頭徹尾、南北戦争で奴隷制廃止に反対の立場であったアメリカ南部の視点に根ざしている。アメリカの歴史において、南北戦争における北軍の勝利は、「自由」「平等」「博愛」の実現を劇的に推し進めた出来事である。しかし、本作では、黒人奴隷によって支えられた豊かな暮らしが凋落する「悲劇」として描かれる。反動的と言われても仕方がないだろう。
2020年5月に起きた「ジョージ・フロイド事件」をきっかけに拡大したBLM(ブラック・ライヴズ・マター)運動を受けて、アメリカのストリーミングサービス『HBO Max』は、「『風と共に去りぬ』にはアメリカ社会でよく見られてきた民族や人権に対する偏見が描写されている」として配信停止を決断。後に、作品の冒頭に批判や歴史的背景を説明する動画を追加する形で配信再開となった。
ちなみに、本作の製作を務めたデヴィッド・O・セルズニックは、当時の制作段階からヘイズ・コードによる大幅な修正を受け入れ、黒人への描写についても全国黒人地位向上協会と交渉するなど、原作から差別的表現を極力排除しするように尽力していたという。
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