「『もうちょっと生きてみようかな』と思ってもらいたい」映画『ロストサマー』麻美監督&主演・林裕太インタビュー
1988年生まれの俳優たちが集まり立ち上げた映像製作チーム「889FILM」による初長編作品・映画『ロストサマー』が公開中だ。今回は、本作で監督デビューを果たした麻美さん、本作主演の林裕太さんのインタビューをお届け。本作に込めた思いを伺った。(取材・文:山田剛志)
「完全に自分一人を救うために書いた脚本でした」
物語が生まれたきっかけ
―――事前にいただいた資料によると、本作の物語は麻美監督が高校生だった頃に着想されたとのことです。当時、どのような思いでストーリーを紡がれたのでしょうか?
麻美「本作をご覧いただいた方から、中澤梓佐が演じた人妻・春というキャラクターを後から付け足したのではないかとよく言われるのですが、構想した当初から3人の人物のお話でした。
そして3人それぞれに、当時の私が嫌だったこと、あるいは、寂しい、悲しい、苦しいといった負の感情を散りばめていきました」
―――ネガティブな感情を物語に移し替えることで消化、あるいは昇華するという意識があったのでしょうか?
麻美「そうですね。完全に自分一人を救うために書いた脚本でした。いや…脚本と言えるものでもなかったかもしれません。構想を書き散らしたようなものだったと思います」
―――物語の種だけがある状態から、シナリオの形が見えるまで、ターニングポイントになるような出来事があったのでしょうか?
麻美「私、大学受験のために周囲が勉強に励む中、学校が嫌でたまらなかったので、勉強しているふりをして脚本を書いていたんです。だから、わりと早い時期から物語の骨格は出来ていました。
それ以降、何か嫌なことがあったら逐一脚本に反映していきました。そういう意味では、私にとってデス・ノートみたいなものでもありました(笑)」
―――なるほど(笑)。長年温めてきた脚本を林裕太さん主演で映画化なさったわけですが、キャスティングの経緯を伺えますでしょうか?
麻美「今回、林くんが演じたフユというキャラクターは、当初、合う俳優が見つからなければ私自身が演じるつもりでいました。
今作のプロデューサーである椿弓里奈に脚本を送ったところ、どうやら彼女は読む前に、林くんが出演している『草の響き』(2021/斎藤久志監督)を観ていて、フユに林くんを重ねて読んでいたらしいのです。
フユ役の候補は4人くらいいたのですが、椿の勧めで『草の響き』をスタッフ皆で観て、この人しかいないと思いました」
―――スクリーンで林裕太という俳優を発見した時の印象を教えてください。
麻美「とても準備してお芝居に臨む人なのだろうなという印象を受けました。ノープランで現場に行って、感性で演じるというのではなく、テクニカルな俳優さんなんだろうなと。
でも、本人に伝えたら、『手一杯でそんなこと考える余裕がありませんでした』みたいな感じだったんですけど(笑)」
林裕太(以下、林)「すみません(笑)」
麻美「でも、私が受けたテクニカルな印象は、作ったものではなく、もともとの素質と言いますか、天性の芝居勘の賜物だと思うんですよね。それは今回の現場でも大いに感じました」