日本人女優の過酷な役作りとは…壮絶演技が生んだ傑作日本映画(2)10代美少女が丸刈り…社会現象の超名演技
スポットライトを浴び、多くの人の視線を釘付けにする女優。他とは生まれ持った才能が違う…。側から見ればそんな風に見えないだろうか。しかし女優という仕事は綺麗なだけでは務まらない。彼女たちはこちら側に見せる面の裏で、我々には計り知れない凄まじい努力をしている。そこで今回は、壮絶な役づくりをした女優を5人紹介する。(文・野原まりこ)
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10代の美しい髪の毛を剃り
全身全霊をかけて挑んだ
長澤まさみ『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)
原作:片山恭一
監督:行定勲
脚本:坂元裕二、伊藤ちひろ、行定勲
出演:大沢たかお、柴咲コウ、長澤まさみ、森山未來、山﨑努
【作品内容】
婚約者の律子(柴咲コウ)が失踪し、朔太郎(大沢たかお)は彼女の後を追うために四国へ向かった。その中で、白血病で亡くなったかつての恋人・アキ(長澤まさみ)との思い出が蘇る。
【注目ポイント】
「助けてください!」というフレーズを聞いた瞬間、平井堅の『瞳をとじて』が脳内で自動再生されてしまうほど強烈なインパクトがある本作。
森山未來演じる高校生時代のサクが、長澤まさみ演じるアキを抱きかかえる有名なシーンが頭をよぎる。
撮影時まだ10代だった長澤が、白血病治療の副作用による脱毛症を抱えたアキを演じるために、自ら坊主にしたというエピソードは有名だ。
また、当時堀越高校に通う高校生だった彼女は、校則でスキンヘッドが禁止されていたことから、カツラを被って登校していたというエピソードもある。
しかし、いくら仕事のためとは言え、10代の女の子が丸坊主にしてまで撮影に臨むとは、長澤の役づくりにかける思いは尋常ではない。体当たりで挑んだ芝居は方々から高く評価され、史上最年少で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞するなど、日本映画の歴史に残る名演をものにしてみせた。
あどけなさが残る舌たらずな喋り方と透き通るような存在感は、この瞬間にしか咲かない花を見ているよう。白血病で亡くなってしまうアキの儚さも相まって、なんでもないシーンでも見ていてふと涙が出てくる。
ドラマ版でアキを演じた綾瀬はるかの芝居も見応えがあったが、体当たりの役づくりという点では長澤に軍配が上がるだろう。愛の尊さが閉じ込められた、世代を超えて愛される名作である。
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