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手に汗握る興奮…“空”に注目すべき理由とは? 渡辺謙出演の映画『ザ・クリエイター』考察レビュー【映画と本のモンタージュ】

映画から受け取った感動を全く別の体験に繋げることで、人生はより豊かになる。本コラムでは、ライターでブックレビュアーのすずきたけしさんが、話題の映画のレビューと共に作品理解が深まる本を紹介。“本のプロ”の視点から映画と書籍を繋げ、双方の魅力を引き出す。今回は、映画『ザ・クリエイター/創造者』を考察。(文・すずきたけし)

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【著者・すずきたけし プロフィール】

ライター。『本の雑誌』、文春オンライン、ダ・ヴィンチweb、リアルサウンドブックにブックレビューやインタビューを寄稿。元書店員。書店と併設のミニシアターの運営などを経て現在に至る。

AIと人類の対立にみる現実世界のメタファー

(C) 2023 20th Century Studios
C 2023 20th Century Studios

『ザ・クリエイター/創造者』を見た。

人工知能(AI)が発達した未来。ロサンゼルスでAIが核爆発を起こし、アメリカをはじめとする西側諸国はAIを危険として全面禁止にする一方、アジアではAIと共存を続けたことで、西側とアジアとのあいだにはAIをめぐる戦いが続いている。

物語はAIの創造者(クリエイター)である“ニルマータ”の捜査のためにアジアに潜入しているジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)を主人公に、人類とAIとの戦いを描く。

AI(コンピュータ)と人類との戦いという、SFとしてはもはやお約束ともなっているテーマを描いているものの、本作には人工知能の進化とその先にある技術的特異点(シンギュラリティ)と人類の未来といった“SF”的な思考実験は薄い。

どちらかというと本作でのAIと人類との対立の構図は、差別や分断、西欧対アジア、そしてアメリカの一方的な正義の暴力、そして親子の絆といった現実世界のメタファーとしての視点で描かれている。

シミュラント(模造人間)と呼ばれるヒト型のAIの死(オフ)に対して、アジア圏の人々は涙を流し、アメリカ人はただの機械だとしてAIに一切の共感を持たず容赦なく破壊する。

かつて『ブレードランナー』では他者の感情に対して共感することができない存在として描いていたのは機械であるアンドロイドではなかったか。本作でとても印象深いシーンであった。

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