“消えたアイドル”の生き様に学ぶ女性の「幸せ」とは? 映画『つんドル』徹底考察。実話ベースの異色作。忖度なしガチレビュー
元乃木坂46の深川麻衣と、井浦新が演じたことでも話題となった、実話を元にした映画『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』が公開中だ。今回は、そんな奇妙な同居生活から見える「幸せ」とはなにか。忖度なしでガチレビューをお送りする。(文・寺島武志)【あらすじ キャスト 考察 解説 評価 レビュー】
元アイドルの実話を元アイドル深川麻衣が熱演
『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』。このタイトルだけで、惹きつけられる。しかも、元SDN48に所属した大木亜希子の私小説。つまり実話だ。
AKBグループを筆頭に、女性アイドルグループが多く誕生し、「地下アイドル」といったジャンルも存在し、“アイドル過多”ともいえる現在の芸能界。
「消えていったアイドルのその後」の厳しい現実を描きながらも、アイドル、それどころか若い女性にも全く興味もないような56歳の独身男性との奇妙な共同生活を綴っている。
芸能界を引退した元アイドルのアラサーを迎えた元アイドルで、一般企業で働きながらも、夜は恋活に精を出す日々を送る安希子を演じるのは乃木坂46の元メンバーの深川麻衣。
インスタでは“リア充”ぶり全開のキラキラした投稿を続けるものの、出勤途中に駅で突然足が動かなくなり、仕事へ行こうとしても体が拒否するようになり、退社を余儀なくされる。
収入ゼロとなった彼女は、六畳一間の風呂なしアパートでビンボー暮らしを強いられることになる。預金残高は10万円…。完全に人生に“詰んでいる”状態だ。
精神科医の大熊(柳憂怜)からカウンセリングを受ける安希子は、自分の足が動かなくなった原因をストレスと運動不足と主張するが、そのまくし立てるような口ぶりに、大熊から「まずは深呼吸しましょう」とたしなめられる。大熊の目には、安希子が何かに追い立てられているように映ったのだろう。
そんな安希子に、友人で会社社長を務めるヒカリ(松浦りょう)から、ルームシェアの相手を探している中年男性を紹介される。彼の名は通称「サザポン」(井浦新)。その家は都内の庭付き一戸建て。
不安を抱えながらも、背に腹は代えられない安希子にとって、月3万円で住居を確保できるというメリットを享受できることで、同居を決意する。