田舎暮らしの理想が崩壊する…衝撃の実話とは? 映画『理想郷』徹底考察&評価。タイトルに込められた”最大の皮肉”も解説
text by 寺島武志
第35回東京国際映画祭で東京グランプリ(最優秀作品賞)ほか、主要三部門を制覇したスペイン・フランス合作映画『理想郷』が公開中だ。今回は、ユニークな2部構成となっている本作のレビューをお届け。田舎暮らしとその現実をテーマに、人間の暗部に迫る、本作の魅力を解説する。(文・寺島武志)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
90年代のスペインで起きた衝撃の事件を実写化
本作は、2022年秋に開催された第35回東京国際映画祭に『ザ・ビースト』の題名で出品され、最優秀作品賞にあたる「東京グランプリ(東京都知事賞)」をはじめ、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞の主要3部門を獲得したスペイン・フランス合作のサスペンスホラーだ。
1997年、スペインの小村・サントアラに移住したオランダ人夫婦マーティンとマルゴが起こした事件に基づいており、2010年の事件発覚から裁判が終わるまでの8年間、多くの新聞が報道した実話ベースのストーリーで、この事件については、2016年に、ドキュメンタリー映画『サントアラ』が製作されるなど、スペイン全土を震撼させた。
本作では、実際に事件を起こしたオランダ人夫婦を、アントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)とオルガ(マリナ・フォイス)のフランス人夫婦に置き換えた上で、田舎暮らしとその現実をテーマに、人間の暗部に迫っている。