原作を大胆アレンジ…日本社会に向けたメッセージとは? 映画『隣人X -疑惑の彼女-』徹底考察&評価。忖度なしガチレビュー
text by 寺島武志
第14回小説現代長編新人賞を受賞したパリュスあや子の小説「隣人X」を、上野樹里と林遣都の共演で映画化した『隣人X -疑惑の彼女-』が公開中だ。SFという枠組みを用いながら、他人種との共存、集団真理の恐ろしさにも鋭くメスを入れる本作のレビューをお届けする。(文・寺島武志)<あらすじ キャスト 考察 解説 評価 レビュー>
日常に紛れ込んだ宇宙人を巡る現代の寓話
「ガイジン(外人)」という言葉を広辞苑で調べてみた。「外国人、異人」「仲間以外の人、疎遠な人」という意味に加え、こうした記述があった。それは「敵視すべき人」。
日本人は島国育ちであるがゆえ、太古の昔から、肌の色、話す言葉が異なる人に対する免疫がなく、知らず知らずのうちに排除してしまう。それはもはやDNAレベルと言い切っていいほどの民族意識だ。
本作の1シーンで、日本語がたどたどしい店員に対し、客の男性サラリーマンは「ガイジン、使えねぇなぁ」と吐き捨てる場面がある。そのシーン自体を問題視するつもりはない。そのシーンを「よくある光景」として、自然に受け入れてしまっている鑑賞者側に問題があると感じるのだ。恥ずかしながら、筆者もその1人だ。
本作は、第14回小説現代長編新人賞を受賞したパリュスあや子氏の小説「隣人X」を、上野樹里と林遣都の共演で映画化した異色のミステリーロマンスだ。
故郷を追われた惑星難民「X」が、地球に救いを求め、人間の姿に擬態し、日常に紛れ込んだ宇宙人を巡って、人々がお互いに疑心暗鬼を抱き、恐怖や不安を抱えながら日々を過ごすことになる。
そして、マスコミは報道によってその恐怖を煽り立て、日本人は集団ヒステリーのような状況に陥っていく…。