なぜ宮崎駿は引退撤回を繰り返すのか? その理由となる存在は…NHK『宮崎駿 プロフェッショナル仕事の流儀』解説
text by 寺島武志
2023年12月16日(土)にNHKで放送された『プロフェッショナル 仕事の流儀 ジブリと宮﨑駿の2399日』。宮崎駿が引退宣言を撤回して製作した映画『君たちはどう生きるか』はいかにして作り上げられたのか。彼に影響を与えた高畑勲との関係性を宮﨑自身が語る、貴重なドキュメンタリーの全容を解説する。(文・寺島武志)
2399日の密着取材で明らかになった宮崎駿の真実とは
「プロフェッショナル仕事の流儀 ジブリと宮﨑駿の2399日」が12月16日、放送された。放送予告が前日とあって、見逃した方も多かったのではないだろうか。
現在82歳の宮﨑、2013年9月、『風立ちぬ』の公開を最後に、映画界から一度は引退している。しかし、会見まで開いて宣言した引退を、3年後にあっさり撤回し、2023年、『君たちはどう生きるか』を発表する。
その間、彼の身に何があったのか。なぜ再び筆を取ろうとしたのか、その原動力は何だったのか。
カメラ嫌い、取材はもっと嫌いな彼に、2399日もの密着取材を敢行し、本人のみならず、プロデューサーの鈴木敏夫をはじめとするスタジオジブリのスタッフにも取材し、さらに、宮﨑の東映動画時代の先輩にして師匠筋にあたり、2018年4月に亡くなった高畑勲との関係性を宮﨑自身が語るシーンも多く挿入され、宮﨑駿とはいかなる人物なのかを詳らかにしている。
この取材はディレクターが「書生」として通うことを条件に特別に許された貴重なものだ。