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宮崎あおい、急逝した巨匠との思い出を語る。青山真治『EUREKA ユリイカ』イベントレポート【第35回東京国際映画祭】

text by 編集部

第35回東京国際映画祭にて、今年3月に逝去した青山真治監督の代表作『EUREKA ユリイカ』が上映された。上映後、同作に出演した宮崎あおい、斉藤陽一郎が登壇。撮影時のエピソードや亡くなった青山監督との思い出を語った。知られざるオーディション秘話、世界の巨匠が勢揃いした映画祭の思い出など充実した話がいくつも飛び出した。

「一点をじっと見つめて」と言われて…。名作『EUREKA ユリイカ』オーディション秘話

バスジャック事件に遭遇した3人の男女の心の旅を描く、上映時間217分の長編『EUREKA ユリイカ』(2001)。第53回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に選出され、国際批評家連盟賞とエキュメニック賞を受賞。「21世紀を代表する日本映画」として、現在に至るまで、数多くの映画人に影響を与え続けている。

映画EUREKA ユリイカ©2001 JWORKS FILM INITIATIVE 電通+IMAGICA+WOWOW+東京テアトル

バスジャック事件を生き延びるも、マスコミの風評被害によって過酷な人生を強いられる少女・梢を演じたのは、撮影当時まだ10代前半の宮崎あおい。兄の直樹を演じた宮崎将は実兄である。

およそ3時間半に及ぶ上映時間のうち、梢のセリフはほんの数行のみ。その分、感情をダイレクトに表現する「まなざしの演技」が鮮烈だ。

宮崎は本作のオーディションについて「まだ子供だったため、ほとんど記憶にない」と語るも、後年になって青山監督から次のような秘話を明かされたという。

写真映画チャンネル編集部

「青山監督はオーディションで特に演技指導などはなさらず、私に『はい、この一点を見つめて』とだけ仰ったそうです。一点を見つめる目がどれだけ澄んでいるか。キャスティングする上でそれが最も大事だったと仰っていましたね」(宮崎)

一方の登壇者である斉藤陽一郎は、青山監督の実質的な処女作であるオリジナルビデオ『教科書にない!』(1995)で俳優デビュー。デビュー作の撮影後、連絡先の交換を申し出たが、青山監督の答えはまさかの「ノーだった」と言う。

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「当時の青山さんは、仲良くなる人たちが相次いで病気になったり、不幸に見舞われたりしていたらしいんです。『だから俺は友達を作らないんだ』と。その時は『嫌われてるのかな?』とショックを受けましたが、続けて『Helpress』(1996)の撮影があるということで、自分から『ぜひ出たい』と青山さんに電話をかけて、アプローチをしました。若さがなせるワザですよね。今だったらできないと思います。それほど青山組の現場が楽しかったんです」(斉藤)

斉藤はその後も数多の青山作品に出演。『Helpress』の続編である『EUREKA ユリイカ』では、前作で演じた青年・秋彦を再び演じることになった。

映画EUREKA ユリイカ©2001 JWORKS FILM INITIATIVE 電通+IMAGICA+WOWOW+東京テアトル

「青山さんから急に電話かかってきて、『お前、秋彦だから』の一言で出演が決まりました。一度終わったキャラクターだと思ったので驚きましたが、とても嬉しかった」

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斉藤は続けて『EUREKA ユリイカ』撮影時のエピソードを語る。「青山監督をはじめとしたスタッフ、主演の役所広司さんら大人たちは撮影後に飲みに行っていたのですが、僕はあおいちゃんと、お兄ちゃんの将くんと、共演者の1人でまだ若かった尾野真知子のお世話係でした(笑)。3人を夜ご飯に連れて行ったり、撮影が休みの日は一緒に遊んで。今となれば良い思い出ですね」

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