神回連発も…真実はドラマ以上? りつ子のモデル・淡谷のり子の泣ける実話とは? NHK朝ドラ『ブギウギ』考察&感想レビュー
text by 田中稲
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』。本作は、戦後昭和の大スター・笠置シヅ子がモデルの主人公・スズ子(趣里)が、歌手の道を突き進む物語。今回は、亡き弟への想いを歌った「大空の弟」や、茨田りつ子(菊地凛子)を中心に、物語を史実と共に振り返るレビューをお届けする。(文・田中稲)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
—————————————
【著者プロフィール:田中稲】
ライター。アイドル、昭和歌謡、JPOP、ドラマ、世代研究を中心に執筆。著書に『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)『昭和歌謡出る単 1008語』(誠文堂新光社)がある。CREA WEBにて「田中稲の勝手に再ブーム」を連載中。「文春オンライン」「8760bypostseven」「東洋経済オンライン」ほかネットメディアへの寄稿多数。
歌で哀しさを物語る「大空の弟」
2024年1月4日からスタートした「ブギウギ」。厳しくなる戦況のなか、歌が、多くの人の心を支え続け、ようやく終戦を迎えた――。
まずは感情が揺さぶられて大変だった12月の「ブギウギ」の振り返りをしていこう。つらくて泣いて泣いて、ハラハラして、そしてときめいて――と、趣里演じる福来スズ子に降りかかる波乱万丈の運命に、改めて、がんばれ、頑張れ とエールを送りたくなったひと月だった。
軍による歌と踊りの規制が描かれた「カカシみたいなワテ」は、もどかしくはあったが、それでもまだコミカルな空気が残されていた。しかし12月4日からの「大空の弟」週は、亀が大好きな無邪気でやさしい弟、六郎(黒崎煌代)の死で、戦争の暗さ、闇がグッと濃くなってくる。
12月6日放送回は、男性たちのこんな会話から始まった。
「実に見事な奇襲だよ。あっという間に終わりますよ。日本の勝利だ」
彼らが読んでいるのは、が行った真珠湾攻撃の新聞記事だ。
それを見て、スズ子は「お葬式とお祭りがいっぺんに来たみたいですわ。六郎は死んでんのに、世の中は、ばんざーい、ばんざーいって」とつぶやくのだ。そして、スズ子から話を聞いた羽鳥善一(草彅剛)が、六郎の歌「大空の弟」を作詞作曲した。