原作者に嫌われた名作映画は? 著者に訴えられた海外映画5選。理不尽な改変に激怒…泥沼の裁判に発展した作品をセレクト
名作と呼ばれる映画作品の中には、元となった原作そのものが名作であることも多い。原作つきのものを映像化する場合、ストーリーの改変やその権利をめぐってのトラブルはつきものだが、中には訴訟問題にまで発展してしまうことも。今回は、原作者やその親族から訴えられた海外映画を5本セレクトしてご紹介する。(文・寺島武志)
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ラストシーン改変に原作者がブチギレ
『ネバーエンディング・ストーリー』(1984)
上映時間:95分
原題:Die Unendliche Geschichte
英題:The Neverending Story
製作国:西ドイツ・アメリカ
監督:ウォルフガング・ペーターゼン
脚本:ウォルフガング・ペーターゼン、ヘルマン・バイゲル
原作:ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』
キャスト:バレット・オリバー、ノア・ハザウェイ、タミー・ストロナッハ、モーゼス・ガン、パトリシア・ヘイズ、シドニー・ブロムリー、ジェラルド・マクレイニー、ディープ・ロイ、トーマス・ヒル、タイロ・プリュックナー
【作品内容】
イジメられっ子のバスチアン(バレット・オリバー)が、読むと別世界に連れて行かれ、自らが主人公になれるという不思議な本「ネバーエンディング・ストーリー」との出会いによって、ナイト・ホブ(タイロ・プリュックナー)とティーニー・ウィーニー(ディープ・ロイ)、さらに女王(タミー・ストロナッハ)が支配するファンタージェンという国に降り立ち、崩壊寸前のその国で、勇者アトレイユ(ノア・ハザウェイ)とともに冒険の旅に出る。
【注目ポイント】
ドイツの児童文学作家、ミヒャエル・エンデの小説『はてしない物語』の映画化したファンタジー作品。
本国の西ドイツや日本でも大ヒットを記録し、日本国内での興行収入は約22億円。続編として3作目まで製作された。
自身の小説が初めて映像化されるとあって、当初、エンデは映画化の話に乗り気で、共同脚本に名を連ねていた。ところが、どういう経緯でトラブルに発展したのか。
まず1つは、原作に対する著作権料がたったの5万ドルしか支払われなかったこと、さらには、監督のペーターゼンがエンデに無断で脚本を書き直したこと。特に、主人公のバスチアンが本の世界「ファンタージェン」で現実のいじめっ子に仕返しをするというラストの展開は、原作を愛するファンからの批判を呼びよせる結果に。
エンデは「原作を全く理解していない」と、製作中止かタイトル変更を要求。しかし、ペーターゼンが「本作はエンデの小説に非常に忠実」と主張したことで、エンデは提訴に踏み切った。
結果として、裁判はエンデの敗訴となり、「ミヒャエル・エンデ」 の名前をクレジットから消すことで和解となった。
本作は原作ファンからの批判も強い反面、1億ドル以上の興行収入を得たヒット作となり、今でも根強い映画ファンも存在する作品だ。映画化のお陰で原作小説は西ドイツで100万部以上のセールスを記録し、27か国語に翻訳。米国でも10万部以上を売り上げ、エンデの懐が潤ったのも事実。
エンデは当初、作品について「商業的、俗物的なメロドラマ映画」とこき下ろしていたが、後に、完全オリジナルストーリーの続編が公開された際には「映画をきっかけに原作を買ってくれたお客さんも多く、原作を読んでもらえる宣伝として考えれば苦痛もやわらいだ」と態度を軟化させたという。