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「完全に狂ってる」新興宗教・カルト教団が登場する日本映画(2)。最高賞を獲得した自主映画とは?

text by 編集部
Getty Images

オウム真理教が暗躍しはじめた1980年代以降、日本ではたびたびカルト教団が世間を騒がせてきた。カルト教団が引き起こした事件は映画の作り手の想像力を刺激し、その結果生み出された作品は、現実を鋭く見つめかえす力をもっている。今回は、カルト教団が登場する日本映画の中でも、観る者の人生観を揺さぶる作品をセレクトした。

(配信状況に関する情報は2022年8月時点のもの)

新興宗教をテーマに据え
男女の狂気的な純愛を描く

『ある朝、スウプは』(2003)


出典:amazon

監督:高橋泉
脚本:高橋泉
キャスト:廣末哲万、並木愛枝、高橋泉

【あらすじ】

サラリーマンの北川(廣末哲万)は、いつものように通勤電車に乗ったところ、突然発作に見舞われる。パニック障害と診断されると、会社を辞め、自宅から一歩も出ない生活を送ることに。同棲相手である志津(並木愛枝)の献身的な支えもあり、北川は在宅での仕事をはじめるなど、徐々にメンタルの調子を取り戻していく。しかし、外出するようになったはいいものの、怪しいセミナーにハマり、しまいには腕に数珠をつけるようになるなど、生活のバランスを崩していく。果たして、志津は新興宗教にハマった北川を取り戻すことができるのか…。

【注目ポイント】

監督・脚本を務めた高橋泉と主演の廣末哲万による、映像制作ユニット「群青いろ」の初期代表作。精神にトラブルを抱え、新興宗教にのめり込む男と、彼を正気に戻そうとする恋人の関係を濃密なタッチで描き、日本最大の自主映画コンペティション「ぴあフィルムフェスティバル」で最高賞を受賞した。監督の高橋泉は新興宗教の信者役として出演もしている。

自主映画であるため、商業映画に比べると映像は不鮮明であり、一部のセリフは聞き取りづらく、音響面も万全とは言えない。しかし、平凡な男がマインドトラブルに見舞われ、新興宗教にハマっていく過程は息を飲むほどリアル。主役の北川を演じる廣末哲万の狂気的な芝居は、一度観たら忘れられないほど鮮烈である。

とはいえ、本作のメインテーマは新興宗教そのものではなく、心の弱みにつけ込まれて新興宗教にのめり込んだ北川を見捨てず、粘り強く寄り添いつづける恋人・志津の献身的な愛である。北川が抱える狂気をも共有しようとする志津の姿は、ある意味でカルト教団よりも異様に映る。本作を目にする者は愛と狂気が紙一重であることを知り、打ちのめされた気分になるだろう。

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