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「完全に狂ってる」新興宗教・カルト教団が登場する日本映画(3)。監督自ら入信…。超大作のエンタメ作は?

text by 編集部
Getty Images

オウム真理教が暗躍しはじめた1980年代以降、日本ではたびたびカルト教団が世間を騒がせてきた。カルト教団が引き起こした事件は映画の作り手の想像力を刺激し、その結果生み出された作品は、現実を鋭く見つめかえす力をもっている。今回は、カルト教団が登場する日本映画の中でも、観る者の人生観を揺さぶる作品をセレクトした。

(配信状況に関する情報は2022年8月時点のもの)

盗撮魔の主人公が教団から女子高生を救出
カルト宗教をエンタメに昇華した4時間の大作

『愛のむきだし』(2009)


出典:amazon

監督:園子温
脚本:園子温
キャスト:西島隆弘、満島ひかり、安藤サクラ、尾上寛之、渡部篤郎

【あらすじ】

高校生の悠(西島隆弘)は、クリスチャンの父親テツ(渡部篤郎)と2人で暮らしている。ある日、テツは失恋をきっかけに人が変わったようになり、悠にしつこく懺悔をもとめるようになる。ユウは父に懺悔する口実を作るため、女性ばかりを狙う盗撮魔となっていった。毎日のように盗撮行為を繰り返す中、不良に絡まれた女子高校生が華麗なカンフーで撃退する姿を目撃。女子高校生の名前は尾沢洋子(満島ひかり)。一目で恋に落ちた悠だったが、謎の新興宗教団体が2人のあいだに立ちふさがるのだった…。

【注目ポイント】

上映時間247分と破格の長さを持ち、アクション、ラブストーリー、サスペンスと様々なジャンルがブレンドされた異色作。ヒロインの洋子に扮した満島ひかりは本作をきっかけに映画女優として大ブレイク。報知映画賞、毎日映画コンクールをはじめ、多くの映画新人賞を独占した。

本作に登場する「0(ゼロ)教会」は、「統一教会」「オウム真理教」など複数の宗教団体をモデルにしているとされ、監督自身が実際に新興宗教に入信して見聞きしたエピソードがふんだんに使われているという。

信者たちが輪になってロウソクの光を囲み、苦悩を吐露していくシーンが印象的である。このシーンによって浮き彫りにされるのは、信者たちはツラい現実から逃げ出すためにカルト宗教にすがりついたという事実だ。映画の作り手は、カルト信者を誇張したタッチでグロテスクに描くと同時に、彼らを絶望に追いやった社会の側にも、批判的な眼差しを向けている。

実話をベースにしているとはいえ、具体的な描写はエンターテイメント仕様にデフォルメされている。宗教施設の壁や床、ユニフォームの色が白に統一されているのは、クライマックスの戦闘シーンで飛び散る鮮血を際立たせるために他ならない。カルト宗教の実態をリアルに描くというよりかは、映画を面白くするための道具として、上手く活用した作品の代表例として挙げられるだろう。

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