モデルになった歴史上の人物は? 過激なグロ描写が意味するものとは? 映画『哀れなるものたち』考察&評価。忖度なしレビュー
text by 司馬宙
ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞し、アカデミー賞の主要部門にもノミネートされ、大きな話題を呼んでいる映画『哀れなるものたち』。主演のエマ・ストーンの強烈な演技が魅力の本作はつまらない?おもしろい? 忖度なしのレビューをお届けする。(文・司馬宙)【あらすじ キャスト 考察 解説 評価】
「すべての女性に観てほしい映画」
本題に入る前に、一つ話しておきたいことがある。
筆者は、公開からおよそ1週間後に、都内のとある映画館に本作を観に行ったのだが、ほぼ満席だった。
休日の昼間だったらまだ分かる。しかし、筆者が見たのは都内最大級のシネコン。しかも平日のレイトショーだ。
確かに本作は、テレビCMやYouTube動画など、宣伝に力を入れている印象があり、宣伝を観た人々が興味本位に足を運ぶことも大いに考えられる。また、R18ということもあり、中には、エマ・ストーンのヌード目当てで足を運ぶ男性陣もいることだろう。
しかし、驚くべきことに、筆者が鑑賞した回は、半数以上が女性の観客で占められており、男性はあまりいなかった。それどころか、上映中は、ところどころで女性の笑い声が響き渡り、場面によっては爆笑も起こっていた。
「すべての女性に観てほしい映画」―。テレビCMでは、指原莉乃がナレーションでこのように語っていた。この事実が何を意味するのかまだ分からないし、筆者の単なる勘違いかもしれない。ただ、筆者自身、時代の空気の変化のようなものを感じたのは確かだ。映画が確実に誰かに必要とされている―、そんな強い実感を感じた。