映画『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』LGBTQ+の先駆者リトル・リチャードの生き様に迫る
映画『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』は、ロックンロールの偉大なる創設者のひとり、リトル・リチャードの知られざる史実と素顔を描く感動のヒューマンドキュメンタリーだ。今回は、映画チャンネル独占で、ロックの歴史に刻んだ偉大な功績とは別に、性的マイノリティとして彷徨い続けた一面も持っている彼の生き様に迫る。
LGBTQ+(クイア)の先駆者としてのリトル・リチャード
リトル・リチャードは、1950年代半ばに彗星のように音楽シーンに現れ、後進のロック・ミュージシャンに多大な影響を与えたこの革新的な黒人ミュージシャンである。
映画『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』は、彼は一体どのような生い立ちを経て、その名を世界に刻んでいったのかに迫るヒューマンドキュメンタリー。
映画は、アーカイヴ映像に残されたリチャード自身の発言を軸に、彼の出生から晩年までを編年体形式で追っている。
そんな本作は、リトル・リチャードがロックの歴史に刻んだ偉大な功績とは別に、87年に及んだ人生で性的マイノリティとして彷徨い続けた一面も詳細に描かれている。
早くからゲイを公言するリチャードは、性的マイノリティーであることを理解できず、厳しく接する父親に育てられ、少年時代の一時期、勘当同然の扱いを受けた。
それ以前の幼少期でも母親のアクセサリーを身にまとって教会へ通っていたリチャードは、周囲から「クイア」と認識され、変人扱いの憂き目にあっていた。
今でこそ「クイア」という言葉の響きには前向きな部分が生まれているが、1940~50年代の同性愛嫌悪の傾向が強いアメリカ南部では蔑称そのもの。
さぞやリチャード少年の心を傷つけたのではないかと思われるが、本作品で過去を振り返るリチャードに、それを愚痴ったり哀れんだりする素振りはない。
むしろ、ほかとは異なる個性を生きる原動力に変えていた節を感じさせる。実のところ、クイアゆえに放り込まれた場末の白人向けクラブでは、ロックンロールの母と呼ばれる黒人歌手シスター・ローゼタ・サープと遭遇し、本格的なステージ活動の一歩を踏み出すのである。
ロックンロールの形を定義する1曲にもなったデビュー曲“トゥッティ・フルッティ”にしても、オリジナルの歌詞はあからさまにセクシャルなゲイ・ソングだった。
性的逆境を前向きなエネルギーに変換していくリチャードの生き様は、まさに現代のLGBTQ+の先駆けとして再評価されてしかるべきだと映画は気づかせてくれる。
そんな彼だからこそ、騒ぐ観客に向かって「お黙り!」とたしなめる常套句にも、常に温もりとユーモアがにじむのだろう。
本作はリトル・リチャードがクイア・カルチャーの先駆者としての側面も併せ持っていたことを認識すると同時に、現代的な意味での「クイア」を当時から体現していたパワフルなライブパフォーマンス映像を堪能することができるはずだ!
映画『リトル・リチャード:アイ・アム・エヴリシング』
公開記念トークイベント決定
3/2(土) ヒューマントラストシネマ渋谷
11:30 の回・上映後
登壇者:近田春夫、萩原健太
3/2(土) シネマート新宿
14:10 の回・上映後
登壇者:萩原健太、丸屋九兵衛
3/4(月) リトル・リチャード スペシャルWイベント
ピーター・バラカン VS ジョージ・カックル
1トークバトル
17:00の回・上映前/ムービル
2DJ バトル
19:40 開演/THUMBS UP(サムズアップ)
3/9(土) シネマート新宿
14:20 の回・上映後
登壇者:臼井ミトン、高橋芳朗
※上記イベント時間、登壇者は変更になる場合がございます。
製作・監督:リサ・コルテス(『プレシャス』製作総指揮)
出演:リトル・リチャード、ミック・ジャガー、トム・ジョーンズ、ナイル・ロジャーズ、ノーナ・ヘンドリックス、ビリー・ポーター、ジョン・ウォーターズ
2023年/アメリカ/101分/カラー/ビスタ/5.1ch/DCP/原題:LITTLE RICHARD:I AM EVERYTHING
字幕:堀上香/字幕監修:ピーター・バラカン オリジナル・サウントトラック CD:ユニバーサル クラシックス&ジャズ
提供・配給:キングレコード 宣伝:ポイント・セット
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公式サイト
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