「タリバンとは何か?」中東情勢への理解が深まる実話を基にした戦争映画『コヴェナント/約束の救出』徹底考察&評価
text by 寺島武志
過激なパパラッチからヒーロー役までこなす名俳優、ジェイク・ギレンホールが主演を務め、ガイ・リッチー監督とタッグを組んだ、衝撃の感動作。映画『コヴェナント/約束の救出』が公開中だ。今回は同作の魅力に迫るレビューをお届けする。(文・寺島武志)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
「タリバンとは何か」アフガニスタン紛争が生じた背景
本作を観賞するにあたって、まず「タリバンとは何か」を知ろうと思い、外務省HPを覗いてみた。
そこには驚くべき記述があった。
テロに関して、「ソ連軍駐留時代に米CIAによって建設されたゲリラ訓練施設が現在も存在すると言われ、これがアフガニスタン国外におけるテロ事件に結びついている」とあったのだ。
これが何を意味するか。1989年のソ連軍撤退後、いくつものテロ組織が集合離散しながら内戦が続くアフガニスタンの国内情勢を背景に、1994年に誕生したのがタリバンだ。
パシュトー語で「学生」を意味するタリバンは、反共主義の下に結成され、米CIAからも資金的援助も受けていたとされている。ある意味で“生みの親”でもあるのだ。
タリバンの当初の目的は、アフガニスタン国民自身による統治を回復し、国内の政治体制を、同国の慣習に適合させる形で「純化」しようと試みた組織なのだ。
徐々にその勢力を拡大させるにあたって、タリバンは生みの親である米国に牙をむく。「イスラム原理主義」に根ざした人権侵害や女性蔑視が問題視され、国際的孤立を強いられたからだ。
その後、米国大使館爆破事件や外交官やジャーナリストの殺害事件、市街地での自爆テロ事件などを起こし、米国との対立を深める中、決定的な大事件が起きる。
2001年9月11日の同時多発テロ事件だ。
米国はテロの容疑者として、オサマ・ビン・ラディンを筆頭とするアルカイダ関係者を引き渡すように要求。しかし、政権を掌握していたタリバンはこれを拒否。ここから米軍史上最長の戦争となる、20年にも渡るアフガニスタン紛争に突入することになるのだ。