史上最低のNHK大河ドラマは…? 評判最悪なガッカリ作品(3)嘘をゴリ押し…歴史家も激怒した散々な理由は?
1963年に始まり、現在まで連綿と受け継がれてきたNHKの大河ドラマ。2023年現在までに62作ものドラマが作られてきたが、当然、その中には残念ながら視聴者からの評判が振るわない作品も存在する。今回は、歴代の大河ドラマ作品の中で、特に視聴者から評判が悪かったとされるワースト作品を5本紹介する。(文・寺島武志)
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時代考証を全く無視…。
”愛”の間違ったイメージをごり押し
『天地人』(2009)
主人公:直江兼続
放送期間:2009年1月4日~11月22日
脚本:小松江里子
原作:火坂雅志『天地人』
最高視聴率:26.0%
主演:妻夫木聡
【作品内容】
天下人・豊臣秀吉(笹野高史)にも見込まれた上杉家家臣・直江兼続(妻夫木聡)の生涯を描いた作品。
幼少時から上杉景勝に小姓として仕えた兼続は上杉謙信(阿部寛)「唯一無二の弟子」として、「義」の精神を教えられ、志を受け継ぐ。上杉謙信の死後、戦功を上げて頭角を現した兼続は上杉家の家老昇格。やがて上杉家の執政として采配を振ることとなる…。
【注目ポイント】
兼続役の妻夫木聡をはじめ、北村一輝、常盤貴子、阿部寛といった人気俳優をキャスティングし、女性ファンの取り込みを図り、その目的は奏功したものの、「時代劇っぽくない顔ぶれでリアリティーに欠ける」と大河ファンから不興を買う。
脚本の小松江里子が得意とするホームドラマ的な雰囲気で、徳川家康を演じた松方弘樹の貫録ぶりや、少年時代の兼続(与六)を演じた加藤清史郎の人気などが功を奏し、平均視聴率21.2%を記録した。特に加藤はあまりの人気ぶりから、兼続の子・竹松(直江景明)役で再登場したほどだ。
歴史の転換点となる合戦などの重要な出来事をナレーションで飛ばし、兼続とお船の会話などのシーンが前面に出過ぎており、さらに、小早川秀秋(上地雄輔)や、ドラマのオリジナルキャラクターである初音(長澤まさみ)など、兼続とあまり接点のない人物にフォーカスする一方で、真田幸村(城田優)や石田光成(小栗旬)、上杉家の宿敵・新発田家との最大の戦いである長谷堂城合戦の相手である最上義光など、謙信亡き後の上杉家を語る上で欠かすことができない人物が登場しない。
また、兼続の功績をことごとく省略した上に、なぜか「五大老・五奉行制」の発案を兼続のものにし、大坂夏の陣で千姫を救出したのを兼続の手柄にし、功績を捏造するなど、時代考証を全く無視した脚本づくりに、歴史家からも非難の声が上がった。
さらに、直江兼続の兜といえば「愛」の文字が掲げられているが、これは、武田信玄と北条氏政の打倒を祈願した愛宕神社の名称から採用されたという史実を無視し、「LOVE」の意味で押し通した。
演出面でもスポットライトを多用してみたり、カメラの角度が頻繁に変わるなど、斬新さを出そうとして空回りしている印象を与え、脚本ともども“失敗作”の烙印を押された一作だ。
一方、本作は物語の舞台となった新潟県、山形県、福島県の観光振興に一役買ったことも事実であり、ポジティブな側面も少なくない。
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